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 ペルー旅行記(3)


2012年9月22日(土)


コカ茶

 さて一夜明けて9月22日になった.外を見たら小雨が降っている.この日から本格的な観光が始まるわけだが,朝は比較的ゆっくりである.一般にペルーの旅行商品は様々で,忙しいツアーだと深夜リマに到着し,ホテルで2〜3時間休んだ程度で,夜明け前にはもうナスカに向けて出発,地上絵観光後すぐにリマにとんぼ返りというパターンもある.我々がバックアップとして抑えていたツアーがまさにこのパターンだったのだが,日程に余裕がある今回のツアーでは,この日はほぼ移動のみでゆっくりなのが助かった.まずは朝食のためのレストランへ.一般的なビュッフェスタイルの朝食だったが,我々の注目したのがコカ茶である.
 コカ茶はコカの葉っぱを煎じて飲むハーブティーの一種だが,一方でコカといえばコカインの原料にもなる植物である.もちろんコカ茶に使用する程度の葉量で中毒になることはないのだが,コカはコカというわけで日本を含む世界の大多数の国ではその取扱いが厳しく規制されている.ただペルーでは一般的な飲み物として広く流通しており,スーパーでも購入可能だ(ただし先述の理由で日本に持ち帰ることはできない).ちなみにコカ茶には高山病を予防する作用もあるとされていて,ペルーの高地帯ほか,ボリビアでも盛んに飲まれているらしい.

朝食のレストラン

欧米風のスタイルです

これがコカ茶
 

リマの市街地

 食事が済んだらバスに乗って出発となる.今回のツアーの参加者は19名と私が参加した旅行の中では,演奏旅行を除けば最大規模だ.ヨーロッパなどの都市やリゾート地に行く時は個人だし,これまで参加した団体ツアーはもっぱら秘境系ばかりだったので参加者が少ないものばかりだった.さすがペルーはメジャーな観光地だなと感心する.この日の予定はナスカの地上絵がある場所にほど近いパラカスという街への移動と,その途中にある遺跡を見学するだけというゆったりスケジュールである(この後高地への旅が待っているので疲れないようにということらしい).
 ホテルを出たバスはリマ市内を走って一路南へ進路をとる.リマは大きな街だが,電車などの公共交通機関が未発達なために移動の手段はもっぱら自動車である.この日は土曜日で平日よりは車が少ないらしいのだが,それでもたくさんの車で渋滞していた.
 ペルーの太平洋岸は,沖合を南極からやってくる強力な寒流(フンボルト海流)が流れているために,緯度の割に冷涼で,降水量が極端に少ない,いわゆる海岸砂漠地帯となっている(これはナミビアなどアフリカ南西部と同じ気候).しかしながらアンデス山脈の雪解け水を運んで海に至る川がところどころに存在するため,それらの川がオアシスの役割をはたして周辺に町が広がっている.リマもまたそのような街である(リマック川).

人数が多いのでバスの大型です

リマ市内の渋滞

郊外の新興住宅(地震が起きたら崩れそう)
 
近年は特に地方からリマへの人口の流入が急速に進んでいるらしく,都市周辺には急造された住宅がひしめいているのが見えた.なかには工事中のものも多いのだが,その壁の薄さと言ったら… ペルーは日本と同様に地震が多い国であるが,これらの建物はとてもそんな耐震構造を持っているとは思えない.ちょっと大きめの地震が襲ったら,あっという間に崩壊してしまうんじゃないかと心配になった.   


パチャカマク遺跡

 それでもなんとか市街地の渋滞を抜けて郊外に出た.周囲は海岸砂漠の単調な景色となる.約1時間ほど走って最初の観光場所,パチャカマク遺跡に到着した.
 一般にペルーの文明というと,条件反射的にインカ文明の名前が出てくるのだが,実はペルーなど南米の歴史の中でインカ文明が栄えたのは15〜16世紀の100年間程度に過ぎない.とはいえ,もちろんそれ以前に何もなかったわけではなく,各地に様々な文明が栄えていた.これらはまとめてプレインカ文明と呼ばれており,クスコなどの高地帯はもちろんのこと,海岸部にもいろんな文明が存在していたことがわかっている.ナスカの地上絵で知られるナスカ文明もそのひとつだが,リマの南部の海岸地帯にもパチャカマク文明が存在した.この文明の神殿跡として今あるのがパチャカマク遺跡である.
 バスを降りて半分砂漠のような土地に踏み込んでいく.遺跡の規模はかなり大きく,全体がピラミッドのような形状になっており,その頂上部分に太陽の神殿がそびえたっていた.パチャカマクとは,パチャ(=天地)カマク(=創造主)を意味し,元々はこの地域の人々が崇める魚神(さすが海岸地域だけに魚がご神体だった模様)の神殿があった場所である.後にインカ帝国がここを征服したのち,山頂に太陽の神殿を作ったもののようだ.インカはこの地の征服後も地元民の信仰はそのまま許容したとのことで,この辺に当時インカが急速に勢力を伸ばした秘密が感じられる.16世紀にスペイン人による征服の後,この神殿は徹底的に破壊されてしまった.発掘,復元が開始されたのは比較的最近のことである.
 一般にインカというと堅牢な石組みで知られるが,この遺跡は巨石の少ない海岸砂漠ということもあるのか,資材の中心は日干し煉瓦で,これらを積み上げた壁や神殿跡がたくさんあった.我々はバスで途中まで入って神殿への坂道を登ったが,頂上から見る遺跡の全体像はあまりにも大きくて感動的だった.またここは地元の子供の学習場所にもなっているのか,野外学習風の大勢の子どもたちの姿も見えた.

パチャカマク遺跡


ここがプレイン化時代の魚神の神殿跡らしい


インカ人が建てた太陽の神殿


日干し煉瓦の壁が見事です
 

神殿前で記念撮影

神殿の入り口

砂漠でたくましく生きる植物
 

神殿上部です


窪みは椅子のようです


太平洋が見えます(島はその形から鯨島)
 
 遺跡の後は近くにある博物館と復元された月の神殿を見学,博物館には当地に栄えた文明の出土品がたくさん展示されていた.土器やキープと呼ばれる結縄(縄の結び目で情報を記録する一種のメディア),仮面などがあって,旅行前に行ったインカ帝国展で展示されていたものにそっくりなのがたくさんあって驚いた.博物館の外に出てみたら,せわしなく羽ばたくことで知られるハチドリの姿あった.

月の神殿
 

遺跡そばの博物館

遺跡の全体図

面白い形の壺です
 

動物をあしらった壺

キープと呼ばれる結縄

見事な織物です
 

インカの世界観をあらわすといわれる柱

表情豊かな土器です

これも壺のようです
 

怪獣みたいです(笑)

仮面もあります

ハチドリ
 


ペルー料理のランチ

 遺跡および博物館の見学が終わるとバスに乗り込んで,再び海岸沿いを南下していく.リマ出発時は曇り空だったが,この頃から徐々に晴れ間が広がってきた.1時間ほど走ったところでEL PILOTOというレストランに到着,ここがこの日の昼食スポットだ.外観はこじんまりとしているが,中は意外に広かった.添乗員さんの話では休日にはリマからわざわざ食べに来る人もいるほど人気の店らしい.この日のメニューは前菜がチュぺ・デ・カマロネスという小エビのスープ,メインがタリアン・クリオージョというペルー風焼きそばだった.特に後者は醤油ベースの味付けで日本人の舌に合うだろうと感じた.  

レストラン EL PILOTO

小エビのスープ

ペルー風焼きそば
 


パラカスのリゾートホテル

 昼食後はまたバスに乗り込んでひたすら南下である.この頃になるとすっかり晴れ空になっていた.周辺はひたすら海岸砂漠が広がり,ところどころに存在する川の周辺のみに緑が点在している感じだった.食事の後ということもあって,見渡すと他の参加者はほとんど寝ている(笑).気持ちよく揺られること約1時間でこの日の宿泊地であるパラカスに到着した.
 パラカスは海岸に広がるリゾート地で,この日のホテル,ダブルツリー・パラカスもリゾートムード満点だった.今日一泊しかしないというのがもったいないような感じである(まあ,それなりに滞在時間があるだけ,2010年のカラカス郊外のホテルよりかはマシなのだが).ホテルには大きなプールのほか,目の前にはプライベートビーチも広がっている.このビーチを歩いていくと,フラミンゴの生息地があるとのことだったが,さすがにそこまで歩く時間はなさそうだったので諦め,付近を散策することにした.ペルーはその国土全体が南回帰線と赤道の間にあるため,気候的には熱帯でおかしくないのだが,先述のように沖合を流れる寒流の影響で意外に気温は上がらない.夕方のパラカスのビーチも心地よい風が吹いていた.付近を見渡すと,干からびたクラゲが海岸にたくさん打ち上げられている.品種はわからなかったが,日本で話題になっていた越前クラゲの親戚なんだろうか.
 その後は部屋に戻って寛ぐ.夜になったので夕食のためにレストランへ,この日はビュッフェスタイルだった.飲み物は各自お好みなのだが,見渡してみてもアルコールを注文しているのは我々の他はわずかの人だけ,やっぱり自分たちが酒飲みであることを実感したのだった(爆).
 さあ,明日はいよいよナスカの地上絵である.

パラカスのホテル

プール付きです

パラカスの海岸

ペリカンがいます
 

夕食はビュッフェ

ピスコサワー

トロピカルカクテル
 



 

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