それでもなんとか市街地の渋滞を抜けて郊外に出た.周囲は海岸砂漠の単調な景色となる.約1時間ほど走って最初の観光場所,パチャカマク遺跡に到着した.
一般にペルーの文明というと,条件反射的にインカ文明の名前が出てくるのだが,実はペルーなど南米の歴史の中でインカ文明が栄えたのは15〜16世紀の100年間程度に過ぎない.とはいえ,もちろんそれ以前に何もなかったわけではなく,各地に様々な文明が栄えていた.これらはまとめてプレインカ文明と呼ばれており,クスコなどの高地帯はもちろんのこと,海岸部にもいろんな文明が存在していたことがわかっている.ナスカの地上絵で知られるナスカ文明もそのひとつだが,リマの南部の海岸地帯にもパチャカマク文明が存在した.この文明の神殿跡として今あるのがパチャカマク遺跡である.
バスを降りて半分砂漠のような土地に踏み込んでいく.遺跡の規模はかなり大きく,全体がピラミッドのような形状になっており,その頂上部分に太陽の神殿がそびえたっていた.パチャカマクとは,パチャ(=天地)カマク(=創造主)を意味し,元々はこの地域の人々が崇める魚神(さすが海岸地域だけに魚がご神体だった模様)の神殿があった場所である.後にインカ帝国がここを征服したのち,山頂に太陽の神殿を作ったもののようだ.インカはこの地の征服後も地元民の信仰はそのまま許容したとのことで,この辺に当時インカが急速に勢力を伸ばした秘密が感じられる.16世紀にスペイン人による征服の後,この神殿は徹底的に破壊されてしまった.発掘,復元が開始されたのは比較的最近のことである.
一般にインカというと堅牢な石組みで知られるが,この遺跡は巨石の少ない海岸砂漠ということもあるのか,資材の中心は日干し煉瓦で,これらを積み上げた壁や神殿跡がたくさんあった.我々はバスで途中まで入って神殿への坂道を登ったが,頂上から見る遺跡の全体像はあまりにも大きくて感動的だった.またここは地元の子供の学習場所にもなっているのか,野外学習風の大勢の子どもたちの姿も見えた. |
パチャカマク遺跡
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ここがプレイン化時代の魚神の神殿跡らしい
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インカ人が建てた太陽の神殿
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日干し煉瓦の壁が見事です |
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神殿前で記念撮影 |
神殿の入り口 |
砂漠でたくましく生きる植物 |
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神殿上部です
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窪みは椅子のようです
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太平洋が見えます(島はその形から鯨島) |
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遺跡の後は近くにある博物館と復元された月の神殿を見学,博物館には当地に栄えた文明の出土品がたくさん展示されていた.土器やキープと呼ばれる結縄(縄の結び目で情報を記録する一種のメディア),仮面などがあって,旅行前に行ったインカ帝国展で展示されていたものにそっくりなのがたくさんあって驚いた.博物館の外に出てみたら,せわしなく羽ばたくことで知られるハチドリの姿あった. |
月の神殿 |
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動物をあしらった壺 |
キープと呼ばれる結縄 |
見事な織物です |
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インカの世界観をあらわすといわれる柱 |
表情豊かな土器です |
これも壺のようです |
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