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 ギアナ高地旅行記(5)


2010年8月9日(月)


ロストワールドの世界

 一夜明け8月9日となった.この日の予定はまず午前中にロライマ山へのヘリコプターツアーに参加,その後再びセスナ機でギアナ高地観光の拠点カナイマの村に移動する流れである.
 ギアナ高地の存在を世界に知らしめたのが,コナン・ドイルの”The Lost World” (邦題 失われた世界)である.この作品の舞台となったテーブルマウンテンがロライマ山であるといわれている.古くからギアナ高地に住んでいる先住民ペモン族はテーブルマウンテンをテプイと呼ぶのだが,なぜかこのロライマだけはテプイと呼んでいない(ロライマは現地語で偉大という意味).ギアナ高地のテーブルマウンテンの中では登山がしやすい山として知られ,乾季にはトレッキングツアーも行われるが,雨季の登山は困難で,代わりにヘリコプターでのアプローチが行われている.
 テーブルマウンテンといえば,RPGの名作ドラゴンクエストUのラスボスが住むロンダルキアが周辺からは窺うことのできない台地状の山ということで案外モデルはギアナ高地かもなんて考えてみたのだった.
   

中庭にはこのような植物が

ロッジの前で

受付にあったマリア像
   


ロライマ山へ

 まだこちらの時差に慣れていないのか,この日もかなり早く目が覚めた.すでに外ではヘリコプターが飛び交う音が聞こえている.ロライマ山観光のヘリであることは明らかだ.どうやら飛べる状況にはあるらしい.外に出てみるとまずまずの天気である.はるか東の方向を見るとロライマ山が見えたが,山頂には雲がかかっているようにも見えた.簡単な朝食(パン,フルーツジュースにコーヒー程度)を摂って,いよいよ出発である.
 前夜の夕食時のくじ引きで私とKは最初のフライトに乗ることが確定している.ここまでするのは雨季のロライマは天候が不安定でヘリが飛ぶか飛ばないかぎりぎりまでわからないからである(要するに運次第ということ).迎えの車がやってきて,私を含む第1陣が飛行場に向かう.今日この街でオートバイのレースか何かの大会があるらしく,朝っぱらだというのに途中の道路はかなり混雑していた.

早朝のロライマ山

サバンナが水であふれている
 
 飛行場につくとすでにヘリは待機している.どうやら飛べるとのことで,あらかじめくじで決められた場所に座った.さあ出発である.ロライマ山頂は標高2800メートル,ヘリはぐんぐん高度を上げていく.しばらく飛ぶとロライマ山の岩肌が見えてきた.山頂は雲がかかっていたのだが,その切れ目からヘリは進入していく.山頂のごつごつしたむき出しの岩が一面に広がっていた.そんな山頂の岩場の中のちょっとした広場のようなところにヘリは着陸した.  

ロライマ山に向かう

荒涼とした頂上台地

滝も見えます
 


ロライマ山頂の不思議な世界

 ヘリを降りて周囲の散策を開始する.見渡すと黒いごつごつした岩場が広がる荒涼とした空間である(たしかにRPGなら魔物が現れそうだ).赤道からわずか500キロの熱帯地方とはいえ,標高2800メートルのこの台地は,大量の降雨によって栄養分が水と一緒に流されてしまうため,生き物の生息には極めて過酷な環境である.樹木はおろか,背の高い草すらない荒涼とした光景が広がっていた.特に印象的なのが岩で,まるで何者かが掘った彫刻作品のような造形を見せていた(それだけ激しい風雨にさらされているということである).標高のため気温も低く上着がないとちょっと辛い世界である.
 前述のようにロライマ山の山頂は生きるには過酷な環境であるが,それでもやっぱり生命は存在する.可憐な高山植物や,食虫植物に交じって我々の目をとらえたのは小さなカエルであった.
 これはオリオフリネラと いう名の恐竜時代の形態を今に遺すといわれる極めて原始的なカエルである.どこが原始的かというと,手に水かきがなく飛んだり跳ねたりもできないというおよそカエルとしての能力に乏しいカエルなのである(このカエルは卵から孵った段階ですでにカエルの形をしていて,いわゆるオタマジャクシの時期がはっきりしないのだそうだ).そんな不思議な山頂の景色を堪能したのち再びヘリに乗り込み下山することになった.

このヘリに乗ってきました

奇岩が並ぶ世界(ブリザードやギガンテスが出てきそう 笑)

小さな湖が… 「失われた世界」のグラディス湖なのか
 

ロライマの植物(1)

ロライマの植物(2)

オリオフリネラ

実はこんなに小さい
 
 


サンタエレナの空港

 下界に戻ってしばらくすると雨が降り始めた(われわれの後,次のグループが飛ぶ予定だったのだが,この後天候が急変したため中止になってしまった.本当に運次第だなぁと痛感する).他のメンバーと合流した我々はそのままサンタエレナの空港に向かった.
 ここからは昨日と同じセスナ機ででギアナ高地観光の中心地,カナイマ村に向かうことになるのだが,雨のために飛行機の到着が遅れているとのことで,そのまま待機となる.サンタエレナの空港は比較的最近整備されたのか小奇麗な感じであった.我々は待合所で渡されたランチボックスを開けてちょっと早めの昼食にした(このあといつ食べられるか不明でもあった).しばらく待ったのちにセスナが到着.前日同様5人乗りと7人乗りの2機に分乗 して出発となる.
   

サンタエレナ空港にて

ランチボックス

セスナが停まってます
   


初めてのエンジェルフォール

 サンタエレナの飛行場を飛び立った段階ではまだ雨降りだったが,飛んでいるうちに徐々に晴れ間が見えてきた.窓から周囲を見ると緑のジャングルからテーブルマウンテンがたくさんそびえている.さらに地上を見下ろすとジャングルの中を縫うように川が蛇行しているのが見えた.日本では絶対に目にすることのない風景であり,改めて自分が南米のギアナ高地にやって来たんだと実感した瞬間である.
 しばらく飛行していたら,セスナはひときわ大きなテーブルマウンテンに近づいて行った.ふと操縦士が指差す方向を見ると,巨大な山肌から滑り落ちる大きな滝が見える.「エンジェルフォールだ!」と機内で歓声が上がった.どうやら天候がまずまずなのでエンジェルフォールのあるアウヤンテプイ周辺を飛んでくれているらしかった.さらにセスナはテプイの頂上台地をかすめるように飛行していく.予期していなかったサービスに感動した一同であった.
 アウヤンテプイを後にしたセスナは高度を落としていく.しばらくすると目の前に大きな滝のある湖が見えてきた.湖畔には集落が広がっている.ここがギアナ高地観光の拠点となるカナイマ村である(湖はカナイマ湖).拠点とはいえ人口2000人に満たない小さな村だ.ここは周辺からアプローチできる道路がなく,空路でしか来られないというまさに陸の孤島なのであった(一昨日見たカロニ川をずっと遡ると,支流であるカラオ川に入ってこの村に至るので,舟でなら来ることが可能かもしれない).セスナは村の近くにある小さな飛行場に着陸した.

さっそくテーブルマウンテンが見えてきた

テーブルマウンテンとジャングル,そして川

やけに尖がった山
 

カラオ川の途中にあるオルキディア島(ロッジが見える)

セスナはテプイの上に入ります

アウヤンテプイの頂上台地.ところどころに草も生えている
 

この旅行最初のエンジェルフォール

すさまじい奔流です


カナイマ湖畔の飛行場に着陸
 


ウカイマ・キャンプ

 今回のツアーはこのカナイマにじっくりと腰をすえて観光しようという趣向である.ギアナ高地のツアーではこのカナイマには2泊または3泊するのが定番なのだが,我々はここに4泊してゆっくり見て歩く予定になっている.雨季のギアナ高地は水量の豊富なエンジェルフォールを観光できる時期なのだが,一方で天候状況によっては計画が狂うことも多く,日程にかなり余裕を持たせているわけである.
 飛行場に到着すると,ここで今回のカナイマ滞在中にお世話になるガイドと合流する(アントニオというさわやかな青年).まずは宿泊先のホテルに行くことになり迎えのバスに乗り込んだ(バスとはいってもトラックの荷台を座席に改造したワイルドなバスだが 笑).今回私たちが宿泊するウカイマ・キャンプはカナイマ湖の湖畔にある.トラックバスは村内の道路を進んでいくが, 雨季で川も増水しているこの時期,場所によっては道路が浸水しているところもある.しかしそんなことはいっさい構わずバシャバシャと走っていった(笑).途中にはカラオ川がカナイマ湖に注ぎ込む段差が滝になっているウカイマ滝もあった.ここに限らずギアナ高地の川や湖はテーブルマウンテン上の腐葉土から染み出したタンニン(お茶にも入っている苦みの成文)を含んでいるため茶色をしている(ほうじ茶みたいな感じ).ここウカイマ滝も茶色い水が泡立って流れていた.
 トラックバスはさらに走るとやがて行き止まりに,ここからは今度はボートに乗り換えるらしい.結局5分ほど小型ボートに揺られてホテルに到着した.
 ウカイマ・キャンプはキャンプと名がついているが,別にテントを張って寝泊りするような場所ではない(笑).メイン棟と宿泊棟が独立したリゾート地によくあるタイプのホテルである.さっそくウェルカムドリンクをいただいて寛ぐ.係員によるとランチが用意されているからレストランに行くようにとのこと.すでにサンタエレナでボックスを食べていたのだが,ランチのダブルブッキングらしい(笑).一同いわれるがままにレストランに向かい,この日2度目の昼食をいただいた.
 ランチ後は各自部屋に入って荷物整理であった(ちなみにスーツケースはセスナに積み込めないため,ここに滞在するのに必要な荷物を各自ボストンバッグなどにコンパクトに収納しなければならない).

カナイマ滞在中何度もお世話になるトラックバス

茶色い奔流ウカイマ滝

ウカイマ滝で記念写真

途中からはボートに乗り換え

ウカイマ・キャンプに到着
 

ウエルカムドリンク

野菜のラタトゥイユ

チキンのグリル
 


テプイの観察

 本当はこの日の午後は特に観光もなく,ロッジでゆったりタイムの予定だったのだが,参加者一同疲れも見せず元気だったこともあって,ガイドのアントニオの案内でカナイマ湖の対岸にテプイを見に行くことになった.飛行場から来る際に利用したボートに乗って対岸に渡りサバンナを歩いていくのだが… 
 虫が来るわ来るわ(笑)
 蚊やら小バエやらがウンカのごとく襲ってくる.特に例のプリプリの襲撃には閉口だった.日本でも夏なんかにはよく手で虫を追い払う場面があるが,日本では手で虫を払っても,手には空気の手ごたえしか感じない.しかしここカナイマでは手を払うと実際に手に虫がビシバシ当たってその手ごたえを感じるのだ(生まれて初めての感触だ 笑).こんな時重宝したのが実は扇子や団扇である.日本ではこれらは風で涼をとるのに使うのだが,ここでは虫を追い払うのに最適なのである(意外な使い方だ).
 サバンナといえば以前ナミビアのサバンナ地帯に行った際にはこんなに虫はいなかったような気がしたが,これも雨の多いギアナ高地の特徴なのかと思ったのだった.また,ここには虫を食べる食虫植物も多く,これらの観察もすることができた.一方でサバンナに浮かぶテプイの光景は見事であった.
 しばらくテプイを観察した後ロッジに戻る.我々は部屋に戻ってシャワーを浴び,夕食に向かったのであった.
 さあ,明日からいよいよギアナ高地の本格的な観光が始まるのである.

虫の多いサバンナ

ガイドのアントニオ

モウセンゴケの仲間の食虫植物

かなり小型です
 

蟻塚です

たくさんのテプイが

夕陽に輝くテプイ
 

カラオ川岸からのテプイ(中央の円盤状のがクサリテプイ,その左がクルンテプイ)
 



 

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