商店街を一通り見物したあとさらに海の方へ行くことにした.商店街のすぐ北にはロングイヤービーエン病院がある.白塗りの板を張り合わせた外観で脇には救急車が入っていそうな車庫らしきものもついていた.近づいて中をうかがってみたがひっそりとしており営業している様子は無い.今日は平日のはずだが大丈夫なのだろうか.
病院を過ぎてさらに先に進むとねずみ色の大きな建物が見えてきた.これがラディソンSASポーラーホテルで,今回私たちが泊まっているスピッツベルゲンホテルと並ぶスバールバルの2大高級ホテル(?)である.ホテルの周りを歩いて見物していると,大地に生えている雑草を食べている2匹のトナカイがいた.近くによって見てみると2匹とも痩せこけており,毛なんかほとんど抜けかかっている.トナカイは北極圏に広く住んでいる動物で,荒涼とした大地に生えている雑草やコケを食べて暮らしている.元々粗食なのであろうがあまりにも哀れな姿である.我々が近づいていっても街中に住んでいるトナカイは人間なんか慣れっこになっているのか逃げる気配はなかった.
トナカイを離れて北に向かうと海岸道路(ロングイヤービーエンは北に向かってTの字になっており,Tの横棒が海岸道路で左に行くと空港に至る)が見えてきた.道路そば,ちょうど海岸道路と街のメイン道路がぶつかるところに黒っぽい外観の建物がある.これが世界最北の大学The University Courses on Svalbard (UNIS)である.ちょうど我々が向かっている時,学生らしい人が自転車に乗って中から出てくるところであった.UNISは1993年に設立された大学で現在は世界中から集まった200人ほどの学生が極地の生物学や地質学,地球物理学などを学んでいる(日本からここに勉強に行った方のホームページがある).大学周囲をしばらく散策した後ホテルに引き返すことにした.帰りはメイン道路を歩いていく.メイン道路とはいうもののセンターラインもなく,車2台がやっとすれ違えられる程度の道である.忘れた頃に自動車が通り過ぎていく.道路の右手はロングイヤー川になっていて遠くに対岸の建物がちらほら見えている.尖塔のある教会と思しきものも見えた.ロングイヤー川はスバールバルの荒涼とした大地にふさわしくこげ茶色の濁流であった.スバールバルには草原や森は全く無く,不毛の荒地がむき出しになっているため土地の保水力はゼロに等しく,このために上流から多量の土砂が流されてこんな色になっているのだろう.
20分ほど歩いてホテルに戻った.すでに夕方6時くらいになっていたが周りの景色は全く変わっていない.夕食にしてもいい時間であったが私もKもくたびれてそのまま眠ってしまった.結局夜10時頃(とはいっても北緯80度なので外の明るさは昼間と同じ.夜中になればそれなりに薄暗くなるヨーロッパ本土の白夜とは違う)に起きてカップ麺を食べた. |
ロングイヤービーエンの病院.出入りする人もなく,果たして営業しているのか不安になった |
ラディソンSASホテルそばで見かけたトナカイ.食糧事情が悪いせいか痩せこけている |
ロングイヤービーエンのメイン道路.右端に見えるのがUNISである |
世界最北の大学UNIS前に立つ私.学生数は200人ほどということでかなりこじんまりとしている |
町の中央を流れるロングイヤー川.見ての通りの濁流である |
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