ビザンチン皇帝の部屋 本文へジャンプ
アクセスカウンター
 SINCE 2011年9月25日
       

ナミビア旅行記(7)


2008年9月20日(土)


月面世界へ

 一夜明けて9月20日となった.今回の旅行もいよいよ後半である.この日は今回のナミビア旅行の目玉の一つである,スワコプムントからしばらく東に行ったところにある,ムーンランドスケープ(月面世界)の訪問と,2000年近くにわたって生き続ける不思議な植物,ウェルウィッチア(奇想天外)の観賞である.
 朝食を摂った後車に乗り,内陸部に向けて走っていくのだが…とにかく霧がすごい.ここナミビアをはじめとしていわゆる海岸砂漠が発達している地域は,陸地の西側に寒流が流れているため,海から陸に向かう風(偏西風)が冷やされて時に露点を越えてしまい,そのため海岸部に霧が発生することがある.この霧はまさにその種の霧で,そしてこの辺の生物は,主にこの霧から水分を得て生きているのである.しかしそれにしても濃い霧だ.視界も数メートルあるかどうかという感じである.それでも車は広大な大地を走り抜けていった.
 そのうち霧も次第に晴れてきて,目の前には不思議な世界が広がっているのが見えてきた.草木の姿はほとんど見えない.そう,まさにここがムーンランド・スケープ,「月面世界」であった.その荒涼とした世界,1969年7月20日のアポロ計画によるとされる月面着陸の映像・写真は,すべてここで撮影されたものなのである(嘘).なんていうウワサが聞こえてきそうな光景であった.

早朝のムーンランドスケープ

本当に他の惑星のような光景が広がります

なんと植物が!
 
 さて,ここ月面世界において,私はある計画を企てていた.そう,ネタ写である.今回はこの他の惑星を髣髴させる景観をバックに,「スターウォーズ」の砂の惑星に佇むジェダイの騎士の構図を撮ろうと思い,そのための衣装を持ってきていたのであった.早速着用し,いろいろとポーズをとってみると,他のメンバーにも大ウケであった.ジェダイの騎士扮装での「砂の惑星」の撮影は,以前にも鳥取砂丘でやったことがあったが,こちらはより広い範囲に荒涼とした風景が広がっていることもあって,より雰囲気のあるものになったのであった.
 しかし,一見草木も生えない荒野のように見えるこの場所にも,実はひっそりと植物が生えているのである.それは岩に付着しているコケのような地衣類である.これらは主に霧から水分を得てこの地で生育しているらしい(よく見ると岩の表面が濡れている部分があり,この水分を摂取しているようであった).
 他の惑星に紛れ込んだかのような風景の月面世界(とネタ写)を堪能した後は,奇想天外の群生地に向かうのだった.
 

月面のジェダイ

参加者で影遊び

オマケ: 仲間内でやった
スターウォーズ
 


奇想天外の群生地

 何もないかに見える荒涼とした大地を,我々の乗った車は駆け抜けていった.窓の外にも,しばらくは草一本生えていないような光景が続いていたが,そのうちなにやら緑がポツポツと見えてくるようになってきた.よく見ると地面のところどころに,数枚の葉が塊になって生えているのが見える.これこそがウェルウィッチアであった.18日に訪問した化石の森でも一度見ていたが,こちらはまたスケールが違う.砂漠に根を下ろしたその様は,まさに地球外の生命体であるかのようであった.ウェルウィッチアは一属一種の裸子植物で和名を奇想天外というきわめて珍しい植物である.
 車を降りて,早速観察である.一見するとその辺に生えている草を適当に刈り取って一ヶ所に積み上げただけにしか見えないが(一部枯れかかっているし 笑),実はわずか2枚の葉っぱが長〜く伸び,しかも途中ですずらんテープのように何枚にも裂けた結果このように見えるのである.
 化石の森にあったそれとは比較にならないほど大きい.尚,このあたりに生えている奇想天外は,まさに1000年から2000年近くは生きているであろうといわれている個体群である.2000年前なんて,まさにイエス・キリストの誕生とほとんど変わらない時期ではないか(あるいは王莽が禅譲の形式で漢の皇位を奪った時期).まさにすごいスケールである.
 その2000年ものといわれる株は,周りをフェンスで囲われていたが,おそらく日本にこれがあったら,屋久杉のように神木として崇められ,注連縄でもかけられていたであろう
 そして私は,ここでもネタ写の撮影にいそしんでいた(笑).ここでの衣装はズバリ,新選組装束である.

一見すると放置されたゴミのように見えます

この草の山が実は2枚の葉からできているのです

これが2000年生き続けてきた個体です

新選組 vs 奇想天外
 
 実は今回の旅行の計画には,すでに「新選組 in アフリカ」を組み込んであり,ここでの撮影はその一環なのであった.先ほどのジェダイの騎士で着用した柔道着の上からダンダラの羽織を着て,後は袴を着用して完成である(残念ながら刀は用意していません).
 ここでは奇想天外を異星の怪生物に見立て,それに立ち向かうという構図での撮影を行った.本当は長い葉に絡みつかれて首を絞められる構図あたりも撮ってみたかったのだが,これらの株の周りは生体保護のため石で囲まれていて,その円内には立ち入りできないことになっていたため(土が踏み固められることで根が養分を吸収できなくなり,生育に支障が出る恐れがあるため)にそれはできなかった.ちなみに先ほどのジェダイの騎士同様,今回の新選組装束もみんなに大ウケであった.
 

ウェルウィッチアの雌花

こちらが雄花です

草刈の跡ではありません
 


ナミビアの動物たちと南回帰線

 奇想天外の観察(とネタ写)を終え,我々の車は再び荒野を走っていくこととなった.これから我々が向かうのは,ナミブ・ナウクルフト地方である.雲ひとつない晴天(日頃の行いが良いから 笑)と,眼前に広がるサバンナ,まさにアフリカの大地そのものである.ところどころには奇岩も見られ,これが実に不思議な景観を造りだしていた.そしてここには,様々な動物が生息している.まず我々が出会ったのは,地上性のリスあった.最初は気づかなかったのだが,「何かいるらしい」という声につられて外を見てみると,ちょうど地面の巣穴からリスが出てきて,後ろ足2本で立って周りの様子を窺っているのが見えた.2匹のうち1匹は雄のようである.派手さはないが,このような野生動物を観察することができたのは実に新鮮であった.
 次に目撃できたのは,イボイノシシである.これは道路わきの茂みから4頭ほどの群れが現れ,道路の反対側に走っていくところを見ることができた.よく見ると彼らは尾を立てて走っている.その独特の風貌ともあいまって,実にユーモラスな光景である.
 これらの動物たちは小型から中型サイズのものであるが,せっかくアフリカに来たからには,TVでも見るような大型の動物を見てみたい.しかし今は乾季ということもあり,なかなか大型動物の姿を見ることはかなわなかった…と思っていると,遠くのほうになにやら大型の生き物が走っているのが見える.よく見ると…ダチョウの群れであった.3〜4羽ほどで固まりながら,道路わきをダチョウが次々と走っていく.実に壮観,まさにアフリカの大地を実感させる光景であった.
 ダチョウ以外の大型動物として,我々の目を惹いたものとしては,オリックス(プロ野球チームの親会社ではありません 笑)がいた.これは馬のような体と2本の長い角が特徴的な大型哺乳類(ウシ科らしい)で,主に乾燥地帯に生息している.その堂々とした体格と,独特の長い角に我々が魅了されたのはいうまでもない.
 様々な動物たちを観察しながら,次に我々が向かうのは南回帰線である.南回帰線とは南緯23度26分22秒に位置する回帰線であるが,もちろん地面に何か線が引いてあるわけではない.ナミビアはちょうどこれが通る国として知られる場所である.今回は我々もそこへ向かい,

リス,左側の個体は明らかに雄です(笑)

イボイノシシです

ダチョウです

オリックスです

こちらは馬,もちろん野生ではありません
 
記念写真を撮ることになったのであった.南回帰線といっても,特に周りには何かあるというわけではなく,ただ「Tropic of Capricorn」と書かれた看板が立っているだけであったが,これも記念の一つということで,我々も写真に納まったのであった(そういえば岩手県の岩手町には北緯40度の看板がある).
 ところで,今回のこの旅行,ルックJTB「地球の詩」シリーズの一つということで,パンフレットの注意事項に「場所によってはトイレの設備がなく,青空トイレとなる場合があります」という説明があったのだが,今回ついにその「青空トイレ」を使用する場面に遭遇した.南回帰線に向かう途中,とある橋にたどり着いたのだが(今は乾季なので水は流れていないが,雨季になれば恐らく本来の橋の機能を果たすのだろう),その橋の下でトイレ,ということになったのであった.女性陣にはやや厳しいと思われる青空トイレではあったが,これもまた思い出の一つである.
 

ついに青空トイレの時がやってきました

灼熱の太陽が照りつけるアフリカの大地

南回帰線,ここ以北は1年のどこかで太陽が真上に来ます
 

この日目撃した野生のダチョウ
 


同じくオリックスです
 


ロストック・リッツ

 南回帰線を訪問した後は,一路今日の宿泊先である「ロストック・リッツ・デザート・ロッジ」へと向かう.今日はここのレストランで昼食をとり,その後は夕方のサンセット・ドライブまで自由時間である.このホテル(ロッジ),先に宿泊したドロナワーズ・ロッジ同様,何もないだだっ広い荒野の中にぽつんと建っているリゾートホテルである.向かう途中も周りには他に建造物がある気配もなく,平原の中に突然このホテルが現れるのであった.その建物も,周りの光景によくマッチした造りになっており,ワイルドさが漂っていた.
 ホテルに到着すると,まずはレストランに入って昼食である.サバンナの中のホテルとはいえ,レストランのメニューはかなり充実している.特に我々の目を惹いたのはワニ料理であった.ワニは以前,愛知県犬山市の「リトルワールド」でワニラーメンと焼き鳥風のワニの串焼きを食べたことがあるが,ここでも食べられるとあっては,是非賞味してみたい.早速注文することにした.私のほかには女性2名もワニ料理をオーダーしていた(Kはなぜかビーフカレーを注文していた).
 一方で男性2人組はロブスターを注文していた.しばらくして運ばれてきたワニ料理,ステーキ風に調理されていたが,これは尻尾の部分らしく,真ん中に骨があった.

基地のような雰囲気

昼食の会場

ワニ肉のステーキ
 
味はやや脂っこくて柔らかい鶏肉のような感触で,これがまた旨い.昔ヤクルトスワローズにいた外国人選手・パリッシュの大好物であったというワニ,我々もアフリカならではといえるこの食材に舌鼓を打ったのであった.後で男性2人組が注文していたロブスターもおすそ分けしてもらったが,これもまた旨かった.  

ロブスター

ビーフカレー

デザートです
 
 ナミビアの味に舌鼓を打ち,食事のあとはチェックインして部屋で一休みである.ここのホテルは1軒1軒が独立したロッジタイプになっているが,部屋のベッドはここでもジャーマンツインであった.もちろんベッド同士は離せるのだが,ここのベッドは上から蚊帳が吊るされている中にあり,そのためぱっと見はダブルベッドのようにも見えるのであった(男性2人組は「抱き合って寝るんか」と言っていた 笑).
 午後は比較的のんびりしたスケジュールということもあり,私は早速ロッジ周辺でネタ写(新選組 in アフリカ)を撮ることにした.サバンナを舞台に,サボテンと絡んだり敷地内の建物を不逞浪士のアジトに見立てたりしたのだが,そのうち「どうやらこの辺にシマウマがいるらしい」という情報が入り,ぜひシマウマとの絡みをやりたいと思ったのだが,残念ながらシマウマはこの時点では見つけられなかった.
 その後は,ホテルの敷地内にプールがあるということで,せっかくリゾートホテルに来たからということで,入りに行くことにした.プールにはさきに男性2人組が到着しており,「とても気持ちいいですよ」とのことであった.早速我々もプールに入るが,ここは寒暖の差が激しい内陸部,しかもサバンナの真ん中ということで…み,水が冷たい!かなり水温の低いプールであった(それでもKは強引に泳いでいたが).

宇宙ステーションを髣髴させるコテージです

一見するとダブルベッドに見えますが実はツインです

乾燥地帯のためか水が冷たかったです
 
 一通り泳いだ後は,プールサイドで休憩である.広いサバンナにぽつんとあるこのロッジ,鳥の声や虫の羽音のほかはほとんど何も聞こえてこない.俗世の喧騒を離れた,まさに静寂である.これぞアフリカン・リゾートでの極上のバカンスといえよう.なお,前述のシマウマであるが,このあとプールの近くで見ることができ,「おお,これが野生のシマウマか」と感動したのであった(なお,このシマウマは,どうもロッジの従業員に餌付けされている個体らしい.しかし蹴飛ばされる恐れがあるため,「シマウマに近づかないで」という注意書きがフロントに張られていた).  

サバンナで偵察をする新選組(サバンナでこの羽織は目立って実用に耐えません)

フロントにはシマウマ注意のポスターが(ドイツ語表記と言う点がこの国の歴史を示します)

ホテルの目の前に出現したシマウマ,食べるのに夢中で相手をしてもらえませんでした
 


サンセットドライブ

 しばしプールでくつろいだ後は,部屋に戻って夕方からのイベントの準備である.この日のイベントはサンセットドライブ,このあたりの平原を車で駆け抜け,小高い丘から沈み行く夕陽を観賞しようという企画であった.この日用意されたサファリカーはオープンタイプで,ちょうどトラックの荷台に座席がつけられたような形であった.この車を見て2人参加の男性の1人が「なんだかこれから土木工事の現場に連れて行かれて働かされそうやなあ」と話していた(笑).確かに土方作業をやりに行く人々を輸送するのに使うトラックみたいな形状だ.しかし我々が出かけるのは別に工事現場ではなく,夕陽を眺めるベストポイントである.
 我々を乗せた車は一路丘を目指して走っていく.ここはサバンナということもあり,個人的には何か動物が見られるといいなあと期待したのだが,今は乾季ということもあり,残念ながらあまり目立った動物の姿は見られなかった.しかししばらく車を走らせていると,遠くに何か生き物の影が.よく見ると長い角のオリックスであった.これ以外には,木の上に藁をのせたような形状のハタオリドリの巣を見ることができた.しかし途中の景色は荒涼としていて,まさに何ともいえないワイルドさ加減である.途中に見える数々の岩山は,まるでグランドキャニオンかデスバレーのようであった.
 一方,2人組男性の一人は,サソリに関心を抱いておられるようで,しきりに「サソリ食べたい」と語っていた.確かにここはアフリカ大陸,しかも乾燥地帯,サソリがいても何ら不思議はない(実際ロッジにもサソリの本が置かれており,彼は熱心に読んでいた).ひょっとしたらサソリに会えるかも,と我々も期待を寄せたのであった.
 やがて我々を乗せた車は,遠くにロッジを見渡すことができる丘に到着した.この丘から眺めるロッジは,ちょうど周りの岩山に溶け込んでいるようなたたずまいで,ドーム状のロッジ数軒が密集して立ち並んでいる.そしてロッジとこの丘との間には,広々としたサバンナが広がっている.その荒野,よく見ると何かの動物が数頭で群れているのが見えた.「ダチョウかオリックスではないか」とのことであったが,何しろあまりに遠くなのでほとんどゴマ粒サイズにしか見えず,双眼鏡を使っても2本足なのか4本足なのか判然としないのであった.
 一方,丘の上の地面には,何か小さな生き物の足跡らしきものが見える.先ほどのサソリを愛する男性が,同行しているガイドに「この辺にサソリはいるのか?」と訊ねていたが,我々は足元の砂の上に,なにやら変わった足跡があるのを見て「ひょっとしてこれはサソリの足跡なのかも?」と思ったのであった.残念ながらサソリ本体を見ることはかなわなかったが,どうやら痕跡は見ることができたようだ.
 そしていよいよ,夕陽スポットに到着である.ここには既に先客がいて,飲み物(ビールかワインかソフトドリンク)が振舞われていた.我々も早速(ドリンクつきなので)ご馳走になることにした.私はビール,Kは白ワインである.真っ赤に燃える夕陽をバックに味わう酒は最高である.2人組男性もビール片手に,ちょうどCMのようにポーズを決めていた.

こういうトラックで出発です

ひたすら荒涼としたサバンナが広がります

鳥の巣のようです

我々が宿泊しているロッジの全体の様子です

サソリの足跡でしょうか

ナミビアの夕日です

髪が逆立っています
 
 酒が程よく回ったところで何かやろうということになり,我々は「琵琶湖周航の歌」を披露した(2人組男性はオリジナルの「サソリ踊り」を披露していた).現地ガイドの男性も自国の歌を披露してくれたが,歌のメロディーが,なんとなくプロテスタントのコラールを彷彿とさせるものがあった.
 そしていよいよ日の入り,目の前にはこれから沈み行く真っ赤な夕陽の姿があった.アフリカの大地に沈んでゆく夕陽,実にロマンチックであった.ちなみに日没前には,我々のいる丘のすぐ近くをセスナ機が飛び去っていった(着陸間際の高度であった).どうやらここのロッジには,セスナで乗り付けてくる客もいるらしい.
 しかしそれにしても,日が沈むとこの辺はぐっと冷え込んでくる.「アフリカ=暑い」という勝手なイメージを持っていた我々にとって,この寒さはかなり厳しいものがあった.日が沈んだ後はホテルに戻り,夕食である.明日はかなり出発が早い(3時半起き!)ということもあり,夕食の後はさっさと寝ることにしたのであった.
 

ナミビアの星空(南十字が見えます)
  



 

ナミビアトップへ   旅行記(6)へ   旅行記(8)へ