昼食の後我々は,中心部から少し離れたところにあるチンバザザ動植物園の見学に行くことにした.ここはマダガスカル特有の動植物が展示されている公園で,あのアイアイも展示されているということであった.入場門付近で車を降り,早速中に入ることにした.
園内には様々な動物や鳥類,植物が展示されていたが,マダガスカル産ではないものも普通に展示されていた.鳥類のケージにはキンケイ(アジア産の派手な色彩のキジ科の鳥,日本の一般家庭でもたまに観賞用として飼育される.R・コルサコフの「金鶏」とはあまり関係ないと思う)もいたし,別のフィールドにはゾウガメもいた |
チンバザザ動植物園の入り口です.TONGA SOAとはマダガスカル語で歓迎という意味のようです |
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(多分アルダブラゾウガメ,セイシェルが懐かしい).
植物に関しては,最初に歩いている区域は,主に乾燥地帯に生育しているものが展示され,多肉植物やアロエ,三角椰子などが栽培されていた.Kはマダガスカルに来たからには,是非珍名植物「アアソウカイ」(キョウチクトウ科の植物で,園芸植物としても知られている.この“珍和名”は漢字では「亜阿相界」,つまりアジアとアフリカの境という意味で命名されたそうだ)が見たいといっていたが,残念ながらはっきりとそれであるものを見つけることはできなかった(多分どこかで展示してあるとは思うのだが). |
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ここで展示されているのは動植物だけではない.ここではマダガスカル各地のそれぞれの部族の住居や墓のレプリカも展示されており,各部族の生活環境についても学習できるようになっているのであった.そこにはベレンティ保護区でも展示されていたアンタンドルイ族の墓のレプリカも展示されており,「あー,確かにこれ見た見た」と感慨深く思ったものである.住居のレプリカも,確かに道中で見かけたスタイルのものがあり,「そういえばこのタイプの住居が,いまだ現役で使われているんだよなー」と感動したのであった.しかし墓といっても所詮はレプリカなので,結構この墓のそばで遊んでいる子供達もいるのであった(なんか罰が当たりそうな気がするが).
そしてなんといっても,この動植物園の目玉は,原猿類である.特にアイアイは野生下では観察が非常に困難ということで,ぜひここで本物のアイアイを見たいと思ったのであった.アイアイは夜行性の原猿類を展示する専用の動物舎にいるということで,ラベさんの案内によって中に入ることにした.館内は確かに真っ暗だが,イタチキツネザルやネズミキツネザルの展示ブースでは,暗めの照明を使っていたようで,こちらは比較的観察しやすかった.しかし,アイアイのブースはかなり暗さが保たれており(それだけデリケートな動物ということなのだろう),顔を見るのは非常に困難であった.よく見ると2匹いるようで,確かに猫ぐらいのサイズの動物が枝から枝へと動き回っているのが見える.おお,これがアイアイか.顔がよく見えないのが残念だが,それでも童謡や図鑑などでしか見られなかったアイアイが見られたのは感動する出来事であった(後日談:当初アイアイは世界中でも飼育されている動物園が非常に少なく,ここと英国のブリストル動物園にしかいないという話を聞いていたのだが,帰国後,実は上野動物園でも飼育されていたという事実を知り,「せっかくマダガスカルまで行ったのに,上野にいたのかよ…」という気持ちになってしまったのでした 泣)
夜行性の原猿類を観察した後は,昼行性の原猿類の観察である.クロキツネザルをはじめとする原猿類がケージで展示されていたのだが,どうもこの動植物園で日本人研究者が勤務していたことがあったらしく,「動物にエサを与えないで下さい お腹をこわして死んでしまいます」という日本語表記もある注意書き看板が掲示されていた.やはりどこの世界にも,展示動物に食べ物を与えようとする奴はいるものだなあと思ったのであった.
園内には大きな池があり,ここで水生植物も展示されていたが(湿地帯に生えている,巨大な葉のサトイモ科の植物,エレファント・イヤーがよく目立つ),その内部に設けられた小島にも,原猿類が展示されていた.ここにはシロクロエリマキキツネザルとワオキツネザルがそれぞれ展示され,エリマキキツネザルはどうやらバナナを食べていたようである(彼らの姿は,まるで着ぐるみのようである).ワオキツネザルも,洗面器のような食器で何やら食べていたようである.
ここは世界各地の動物園の例に洩れず,やはり市民の憩いの場となっているようで,多くの家族連れで賑わっていた.小学校の課外授業らしき一群もあり,なにやらイベントもやっていたようである.そして日本から遠く離れたこの地でも,日本のキャラクターは知られているようで,我々は「クレヨンしんちゃん」がプリントされたTシャツを着た男の子に出会ったのであった. |
マダガスカル中央部に住む部族のお墓です |
ベレンティ保護区のある南部のお墓です |
東部のお墓.湿気が多い地方なので通気性が良さそうです |
これはお墓ではなく,マダガスカル東部の伝統的な家です |
「えさを与えないで下さい」というプレート |
日向ぼっこをするシロクロエリマキキツネザル |
島北部に住むクロキツネザルのメスです |
ワオキツネザルが一心不乱にえさを食べています |
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