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マダガスカル旅行記(4)

2007年6月10日(日)


ベレンティロッジの朝

 昨夜はメチャクチャ早く寝たため,この日はほぼ日の出と共に目を覚ました.通気性が良過ぎるバンガローには,ヒンヤリとした朝の空気が入り込み,身が引きしまる感じだ.昨夜ラベさんから,「夜明けと共にワオキツネザルが日光浴に出てくるから見ててごらん」と言われていたため,眠い目をこすりながら外に出た.しかし,まだ外がかなり寒いせいか,ワオキツネザルの姿は見られなかった.もう少し暖かくなってからだったら現れるかもしれない,そう思いながら朝食会場へと向かったのだった.
 朝食の会場はロッジの中庭に面したカフェテリアである.行ってみるとすでに何組かの先客がいた.食事はよくあるビュッフェ形式の朝食ではなく,フランス風のパンにフルーツと卵料理が付いた,洋風の朝定食といった趣だ.温かい卵料理が冷えた体に染み渡る.

我々が宿泊したバンガロー

朝食会場はテラスです.まだ結構寒いです
 
 朝食を済ませてバンガローに戻ると,日のあたる部分になにやら動くものがいる.よく見るとワオキツネザルであった.さらにその周辺にも,他に何匹か来てわれわれの方を見ている.どうやら朝の日光浴らしい.その並んでいる様は,まるで学校や会社の朝礼のようであった.  

ひなたぼっこをしているワオキツネザルがこっちを見ています

みんなで太陽のほうを向いている姿は朝礼のようです

我々も一緒に写ってみました(笑).
 


ベレンティ保護区の原猿たち

 朝食後少しくつろいだ後は,本日のメインイベントであるベレンティ保護区の探検である.昨夜はイタチキツネザルなどの夜行性の原猿を探したのだが,今日はワオキツネザルやベローシファカといった日本でもおなじみの昼行性のキツネザルを観察する企画である.特にベローシファカはCMでの横っ飛びシーンで有名な猿だ.我々は是非とも,このベローシファカの横っ飛びの動画を撮りたいと,前々から気合を入れていたのである.
 我々はバンガローを出て,ラペさんと例の赤ジャンガイドと共に,近くにある保護区の入り口から散策を始めた.途中,ワオキツネザルのみならず,ブラウンキツネザルの姿も見られた.彼らはあるものは木に登り,またあるものは水飲み場で水を飲んでいたりと,様々な活動をしていた.続いて森の中へと入っていく.しばらく歩くと,木の上に数頭のベローシファカの姿が見られた.どうも食事中のようである(彼らは植物食のようである)彼らの横っ飛びが見たいのだが,まだまだこの時間帯は下には降りてくれないようだ(赤ジャン氏の話では,暖かくなる昼ごろには降りてくるだろうとのことだった).
 しばらく歩いていると,少し開けたところに出る.このあたりでは,ベローシファカが我々の至近距離で木の葉を食べているのが見られた.彼らの風貌は,何だか「スペクトルマン」に登場する
宇宙猿人ゴリのようにも見える.じっとえらそうにこちらを見ている様は,結構迫力がある.
 そしてこの保護区内で,最も多く見られたのは,やはりワオキツネザルである.本当に”その辺を歩いている”という言葉がふさわしいくらいに,多くの個体が歩いていたのである.中にはどうも病気なのか,尻尾の毛がほとんど抜けてしまって芯だけになっている個体もいた.彼らはみな人なれしているのか,我々が近寄っても逃げる風でもなかった.
 この保護区にはウチワサボテンをはじめとする多肉植物(乾燥地帯なので,水分を少しでも多く確保するために肉厚の体にしたり,棘状の葉にしたりするという進化をしている)が多く見られるが,ウチワサボテンの中には棘のないものがあり,どうやらキツネザルたちはこの「棘なしウチワサボテン」を食べたりしているようであった(彼らによって食べ散らかされた痕があった).彼らは歩き回ったり,寛ぎのポーズをとったりして,思い思いの格好をしていたが,その姿は実にユーモラスである.なお,この保護区には原猿類だけでなく,変わった鳥類やコウモリも生息しており,我々は遠くからではあるが,マダガスカルコウモリのコロニーを見ることもできた(どうも彼らは果実食のコウモリのようである).また,敷地内ではワニやホシガメが飼育されており,特にホシガメの甲羅の模様が我々の興味を引いた(マダガスカルホシガメ=ホウシャガメも絶滅危惧種である)

ワオキツネザルがじっとこちらを見ています


ブラウンキツネザルです


木の上のベローシファカです


偉そうなベローシファカです


こちらはナイルワニです


のんびりしているホシガメです
 

ワオキツネザルの動画

 

ブラウンキツネザルの動画

 

ベローシファカが草を食べています

 


ベレンティ村とアレンベル博物館

 保護区の散策のあと,我々は車に乗り,保護区のそばにあるベレンティ村を見学することにした.この保護区のそばには大規模なサイザル麻の畑があり,このサイザル麻を加工して繊維をとり,バッグやマット,ロープなどの原料としているのであるが,この一連の工程に従事する人々がこの村に住んでいるのである.このベレンティ村はこじんまりとした村で,小規模ながら学校もあり,なんとなく懐かしさを感じるものがあった.車越しに子供たちに手を振ってみるが,実に人懐っこさそうに笑顔を返してくれるのがよい.
 サイザル麻とはリュウゼツラン科に属する,剣のような葉を持つ繊維植物である.その硬くて丈夫な繊維はロープやバッグに加工され,この繊維で作られたバッグは,マダガスカルのお土産品として広く知られている(実際,我々も土産物店で数々の製品を目にすることができた).行程の途中には,実際にサイザル麻から取れた繊維を干しているところもあり,我々もラベさんに勧められてその繊維に触ってみることにした.見た目は仙人の髭のように白い繊維だが,その手触りはかなり硬い.まるで束ねた釣り用のテグス糸のようであった.
 村の見学の後は,保護区内にある博物館,アレンベル博物館の見学である.ここはマダガスカル南部の自然や風土,この地域に住むアンタンドルイ族の生活様式や風習などが現物や写真パネルで紹介されている,こじんまりとした博物館である.まず,建物のそばにあるアンタンドルイ族の墓のレプリカを見学したが,これがまたなんとも興味深い.石垣のようにレンガが積み上げられている上に,墓標と共に牛の頭蓋骨が何体もディスプレイされている.これは故人の富の象徴ということであった.なお,マダガスカルでは部族によって墓の形態がそれぞれ異なり,国道13号線沿いではまた異なる部族の墓地を見ることができた.

ベレンティ周辺は一面のサイザル麻畑です

サイザル麻は,かなりゴワゴワした手触りです

地元の子供たちの笑顔が素敵です

原猿の観察の後,保護区内にひっそりと建つ,アレンベル博物館を訪ねます
 
 そして博物館内部に入る.館内には保護区に向かう途中,13号線沿いで多く見かけた地元民の住居の展示もあった.これはこの地域に広く自生するディディエレア(和名カナボウノキ)を用いて建てられており,解説によると,一族が敷地内に数軒の小屋を持ち,それぞれに一家の長の住む家,女子が住む家…などと住む場所が決められているのだそうである.愛知県犬山市にある「リトルワールド」でこの住居群を展示したらよさそうな気がするが,どうだろうか.その他にも彼らの風習の写真パネルや,日常生活や呪術に用いられる道具などの展示品があった.   

ここを訪れる観光客の国旗が掲げられています(日の丸もあります).

ベレンティ周辺の地図です.熱帯雨林と砂漠がはっきり分かれています

マダガスカル南東部に住む,アンタンドルイ族のお墓(レプリカ)です
 


ベローシファカの横っ跳び

 ひと通りの見学を終えてから,昼食である.会場は昨夜の夕食と同じ,博物館の隣のレストランである.我々はビールを飲みながら食事を楽しみ,その後少し寛いでいた.レストラン近くの広場では,数頭のワオキツネザルが歩き回っている.しばらく彼らをからかっていたのだが,ほどなくして赤ジャンのガイド氏が何やら叫んでいるのが聞こえた.「急いで!急いで!」
 なんだなんだと思って,彼が示している方向を見ると,なんと!ベローシファカがピョンピョン跳ねているではないか!これはチャンスである.もちろんカメラを持って走っていったのはいうまでもない.おお,確かに横っ飛びである.午前中に保護区内を散策していた時は,もっぱら木の上にいてなかなか地面に降りてくれず,「やはり自然の生き物,横っ飛びはそうそう見られるものじゃないな…」と半ば諦めモードでいた我々であったが,天は我々を見放さなかった(大げさ 笑).彼らはちゃんと我々に横っ飛びを見せてくれたのである.

昼近くなって気温が上がり,サルたちも活発になってきました

ベローシファカも下に降りてきました.いよいよ横っ跳びです
 
彼らは2〜3頭で追いかけっこをするかのように飛び跳ねながら移動し,木の上にスルスルと登っていった.短時間ではあるが,しっかり動画に収めることができたのは喜びであった.
 そしてベレンティを出発する時間である.車に乗って,保護区の出入り口付近にまで来た時,再び赤ジャンガイド氏の声が.なんとまたベローシファカが現れたのである.まさに最後のサービスとでもいわんばかりに,3頭ほどのベローシファカが,相次いで横っ飛びを披露してくれたのであった.彼らの横っ飛びの様は,まるで
中に人でも入っているかのようであったそれにしても,TVでしか見ることのできない世界だと思っていた,「不思議なサル」ベローシファカの横っ飛び,今こうして生で見ることができるのだ.なんともいえない感動の瞬間である.動画に収めたのはいうまでもない.最後の彼らのサービス(?)に感動しつつ,我々はベレンティ保護区を後にしたのであった.

 

ベローシファカの横っ跳びの動画です

 

こちらは複数のシファカが次々と跳んでいきます

 


フォール・ドーファンへ

 我々はベレンティ保護区を後にして,国道13号線へと入っていった.保護区からサイザル畑の赤土の道路を抜け,やがて穴だらけの道路(なにせ50年前に造られてからほとんど整備されていないらしい)へと入っていく.例の狭い橋を通り(人もいっぱい歩いている),集落を通り過ぎていく.車窓から眺める集落は,よくTVのドキュメンタリー番組で見かけるアフリカの集落そのものである.私はふいに,この集落を見てみたくなり,その旨をガイドに告げると,OKということで急遽寄ってみることになった(こういう点で貸切ツアーは融通が効く).
 降りて市場を覘いてみると,そこにはまさに,「アフリカの市場」そのものの光景が広がっていたのであった.芋やバナナ,果物,野菜や米などの農産物や,コーヒー豆,サトウキビなどが売られている.肉屋もあったが,肉や牛の頭蓋骨,内臓などが陳列されていて(冷蔵施設なんてものは存在しない.台の上に直に載っていて,メタリックカラーの蝿がブンブン飛び回っているのである)凄い迫力である.まさに国連関係の仕事で現地を視察する
アグネス・チャンか黒柳徹子の気分であった.
 子供たちもたくさんいたが,元気に店番(?)をしていたり,弟妹らしき幼児を抱いていたりして,逞しく生きているようであった.このような光景を目にして,いかに今まで我々がいわゆる「綺麗どころ」ばかりを見てきていたかということを思い知ったのもまた事実であった.確かに今,我々がここで売られている食品を直に食べたりすれば,おそらく食中毒どころでは済まず,あるいは赤痢かコレラかチフスにでもなってしまうかもしれない.公衆衛生のレベルでいえばそれほどの所なのであるが,しかし世界全体を見渡せば,地球上ではこのような環境で暮らしている人のほうが多いのである.そして我々の生活も,つい30年ほど前までは,入浴が毎日だったというわけでもなく,トイレは汲み取り式が普通,家には蝿がブンブン飛び回っていたのである.普段の生活ではつい忘れがちであるが,今回の体験は,我々の生活環境を考え直す上でも大きな刺激となったことは間違いない.
 市場の迫力に圧倒されて,我々は再び車へと戻り,一路フォール・ドーファンへと向かっていった.今夜の宿泊先は「ル・ドーファン」(どうやらベレンティ保護区と同経営らしい)である.ホテル前に着き,ここで赤ジャンのガイド氏とはお別れである.
 ル・ドーファンはさすがにベレンティロッジほどではないが,それでもシンプルなホテルである.Kは部屋に着いてから,早速蚊取り線香を焚き始めた.シャワーを浴びることにしたが,さすがに水シャワーということはなかったが,やはり水圧はそれなりであった.そしてレストランで夕食をとり,部屋に戻ってそのまま眠りについたのであった.

フォール・ドーファンに戻る途中,小さな市場に立ち寄ります

現地の人々が利用する市場です

肉を売っています(よく見ると無数のハエがたかってます)

現地の子供たちです

市場での記念撮影

国道13号で見かけたお墓
 



 

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