明けて9月2日,イスタンブール観光3日目である.昨日の午前中は予想外の雨降りだったのだが,この日は朝から快晴の青空だった(昨日の雨はなんだったのか 笑).ホテルで朝食を済ませると,さっそく行動開始である.この日の予定は午前中にオスマン帝国時代のスルタンの居城であるトプカプ宮殿を訪問し,午後からは旧市街の西部にある史跡を巡ることにした.
ホテルを出て徒歩で宮殿に向かう.この日もヒッポドロームやブルーモスクを横目で見ながら旧市街を北東に進んでいく.アヤ・ソフィアのそばを通って,トプカプ宮殿の入り口である皇帝の門をくぐった(実はここは一昨日も来ている).この門を入った部分が第1庭園で一昨日見たアヤ・イリニ教会は入ってすぐ左手にある.そのまま庭園内をまっすぐに歩いていくと正面に,八角形の尖塔を持った門が見えてきた.これが表敬の門で,ここからが実際のトプカプ宮殿内部ということになる.門の右手にあるチケット売り場で券を購入して,門から入ろうとするとセキュリティチェックが待っていた.まあオスマン帝国時代の財宝が山ほどあるわけだから,中にはよからぬことを考える輩がいるかもしれないので,必要なものなんんだろうなと思ったのだった.
表敬の門を入るとここが第2庭園と呼ばれる広々とした庭となる.ここから見て右手が陶磁器の展示されている厨房,中央に幸福の門,そして左手がハレムになる.トプカプ宮殿の入場料は10トルコリラなのだが,このハレムは別料金でさらに10リラ必要となる.早めにいかないと混雑するといわれていたため,まずはハレムを見学することにした.入り口にチケット売り場がありここでお金を払って中に入る(正面には正義の塔と呼ばれるひときわ高い塔がそびえていた).ハレムは日本でいえば江戸城の大奥に該当する施設で,スルタンの母や妻,それに女奴隷たちが生活する場所である.ここに入れる男性はスルタン以外は去勢された黒人奴隷のみという特殊な空間なのであった.
スルタンの生活というと何となく華やいだ明るい響きがあるが,実際のハレムの内部は小さな部屋に区切られた日陰の世界といった雰囲気だった(スルタンの広間だけは広々としていたが).内壁の装飾はブルーモスクにもみられたようなブルー〜グリーンのタイルで中心となっている.黒人奴隷の部屋やスルタンの母親の部屋などには当時の生活を再現した人形が配置されて往時の雰囲気を偲ばせていた.また,トルコと言えばハマム(トルコ式のサウナ風呂)が有名であるが,ここにはスルタン専用のハマムも設置されていた.
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皇帝の門 |
表敬の門 |
当時ここから先には特別な者しか入れなかった |
宮殿全体の模型 |
正義の塔 |
ハレムの入り口 |
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内壁はブルー系のタイルが使われている |
黒人宦官の部屋
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侍女の中庭
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寵姫の中庭(前出の侍女の中庭より明るい) |
スルタンの母親の部屋
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スルタン専用のハマム
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スルタンの広間(ハレムでは最も広い部屋)
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皇子たちの部屋(皇位継承権を失った皇子が幽閉されていた部屋) |
同じく皇子たちの部屋,ここにあるのはソファーでしょうか
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ハレムを一通り見学したのち今度は第2庭園正面にある幸福の門に向かう.この門がスルタンの私生活の場である内廷(エンデルン)と行政や公式行事が行われる外廷(ビルン)との境になる.もちろん第2庭園のある側が外廷である.幸福の門に向かって歩いていたら左わきに”Byzantine”と書かれたプレートを発見,なんだろうと思ったら,どうやらここに5〜6世紀に造られた貯水池があったらしい.見渡すとレンガの一部がマンホールのようになっていて,ここの地下が貯水池になっているようだった.
幸福の門をくぐって内廷に入ると目の前にお寺の本堂のような建物が立っていた.これが謁見の館と呼ばれるもので,スルタンが政府の高官や外国の使節に謁見した館である.内部には天蓋付きの豪華な王座があって,往時のスルタンの権力を物語っていた(ベッドにも見えるのだが).
謁見の館を出て今度は内廷の見どころである聖遺物の間と宝物館を見学した.聖遺物の間には歴代スルタンによって収集されたムハンマドに関連した品々が展示されている.ムハンマドはイスラム教で最も重要な預言者である(ちなみにイスラム教においてはモーゼやイエスも預言者である).ここにはムハンマドの剣や外套,さらには髭まで保管されており,宗教的に極めて重要な施設である.内部にはコーランも流れかなり厳粛な雰囲気だった(もちろん内部は写真撮影不可).一方の宝物館は一転して世俗的な施設であり,歴代スルタンが収集した宝物が山のように保管されている.特に有名なトプカプの短剣は巨大なエメラルドなどの宝石が惜しげもなく飾られた,とても実戦には使えそうにない(笑)一品だった.その他の壺や食器なども素晴らしく,これらを売却すればトルコ政府の債務はすべて解消されてお釣りがくるという噂は本当だと確信したのだった.
その後はボスポラス海峡に面したテラスで潮風を浴びたり,幸福の門で開催されていた軍楽隊の演奏を見学して過ごした.
こうして一通り宮殿内を見学しているうちにお昼過ぎとなる.せっかくだからということでこの日は宮殿内のレストラン・コンヤルに入ることにした.ここはビュッフェスタイルのカフェコーナーとアラカルトのレストランコーナーがあり,我々はレストランにした.メニューから注文を終えて待っていると,突然自分の携帯が鳴りだした(正確にはマナーモードにしているので震え出したというべきか 笑).出てみると普段付き合いのある他の病院のドクター,「今日資料を送りましたからよろしく」とのこと.日本とトルコの時差はこの時期6時間,ということは夕方の7時ということになる.考えてみたら自分の病院以外には夏季休暇の話はしていないから,まさかこのドクターイスタンブールに国際電話しているとは夢にも思ってないだろうなと心の中で笑ってしまったのだった.
この日注文したのはイスラム圏を意識したわけもないのだが羊肉料理だった(飲み物は午後も歩く予定だったためアルコールは避けてコーラにした). |
こんなところにもビザンチンの史跡が… |
幸福の門 |
謁見の館 |
謁見の館内部 |
聖遺物の間 |
ここがテラス |
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海峡が一望できます |
宝物館のトプカプの短剣
(パンフより) |
レストラン・コンヤル |
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幸福の門の前で行われていたオスマン時代の軍楽隊の演奏です |
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