間もなく船はザンクト・ヴォルフガングへと向けて動き出した.所要時間は約30分である.湖ではいたるところで,泳いだりボートやヨットで遊んだりしている人々の姿が見える.オーストリアには海はないので,この辺の人達は泳ぎたい時はここへ来るのであろう.ちょうど夏の田沢湖と似たような感じである.船の中で我々は,丁度そばにやって来たガイドさんに,今朝のザンクト・セバスチャン教会での話をし,レオポルトの石版の行方について知っているかどうか訊ねてみたが,この人もずっとそこへは行っていないらしく(日本のツアー会社の市内観光でもコースに入っていないらしい),詳細はわからないとのことであった.
そのうち船は対岸のザンクト・ヴォルフガングに到着した.ここはベナツキーのオペレッタ「白馬亭にて」の舞台として知られるホテル「白馬亭」があることで知られる町である……とガイドブックには書いてあるのだが,そもそも我々は「白馬亭にて」を観たことがない(泣).そのため,この地に来てもイマイチピンとこないのである.むしろこの「白馬亭」(Hotel im Weissen Rössl)のすぐ近くにあった「Hotel Schwarzes Rössl」(黒馬亭?)のほうが,我々の琴線をくすぐった.どう考えても,白馬亭に対抗して建てられたとしか思えない(ゾロか 笑).やはりどこの国の人も,考えることは大して変わらないのだなあと思った次第である.個人的にはこの黒馬亭の方に泊まってみたいと思った.
さて,ここザンクト・ヴォルフガングの見どころが,教区教会にあるミハエル・パッハー製作の祭壇である.15世紀に製作されたというから,ゆうに500年以上前のシロモノだ.この祭壇はオーストリアでもっとも重要な文化財のひとつらしい.なんでも,後から作り直そうという企画も出たのだが,パッハーの作のあまりの素晴らしさに,断念したとのウワサもある. |
海から眺めるザンクト・ヴォルフガングの教区教会
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なぜ,ここに教会があるかというと,聖ヴォルフガングが「手にした斧を投げて,落ちた所に教会を建てよというお告げを聞いたからだそうです
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ザンクト・ヴォルフガングの街は教会とホテルが主体となった,レイクリゾートの小さな町でした(人口は2800人だそうです) |
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この教会内部に有名な
祭壇画があります |
ここが,ベナツキーのオペレッタ「白馬亭にて」の舞台となったという,有名なホテルWeissen Rössl(白馬亭)です.格式が高そうです |
白馬亭の近くには,黒い馬をあしらったホテルSchwarzes Rössl(黒馬亭?)というのもありました.個人的にはこっちに泊まりたいです |
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教会を見学した後我々は街中を歩きながらバスを目指した(ザンクト・ギルゲンで我々を下ろした後,先回りして待っていたらしい).バスに乗って次に向かうのはモントゼーの町である.モントゼーとは日本語で「三日月湖」という意味で,その名の通り三日月形をした湖の畔にある町である(昔のドラゴンクエストにでてきたリムルダールの町や,FFⅠのクレセントレイクの町を髣髴させる).ここには映画「サウンドオブミュージック」でマリアとトラップ大佐の結婚式のシーンが撮影された教会がある.一般にヨーロッパの教会には内部の撮影お断りとされているところも多いのだが(先のザンクト・ヴォルフガングの教区教会もそう),ここモントゼーの教会はすっかり観光地化されたためか,撮影可であった(我々も中を見学したり,写真を撮ったりした).ところで,日本では非常に人気の高いサウンドオブミュージックであるが,実は地元オーストリアではあまり知られていないのだという.意外な気もするが,ひとつには映画のドイツ語版ができたのが遅かったことがあるらしいが,その一方で映画のテーマが,ナチスの迫害から逃れる一家というものであることも関係しているのだろう.何と言ってもオーストリアにとって,ナチスはできれば触れたくない歴史であろうから.
モントゼーを出発するとあとはザルツブルグに戻るばかりである.件のガイド氏はザルツブルグでしか手に入らないお土産品として,カフェ・フュルストのモーツァルトクーゲルン(Mozart
Kugeln)を推薦していた.モーツァルトクーゲルンはモーツァルトの絵が描かれたチョコレート菓子で,オーストリア土産の定番ともいえる商品である.あのモーツァルトの顔が描かれた赤と金の包み紙のお菓子を見たことがある人は多いだろう.しかし,この赤いモーツァルトの顔が描かれたモーツァルトクーゲルン,実はゾロ品なのである.本家本元のモーツァルトクーゲルンは,ここザルツブルグにある”フュルスト”というカフェで作られたものであり,銀紙に包まれて全体的に青っぽい色調となっている.一つ一つ手作りらしく,形も真球には程遠く,値段も高めなのであった(ゾロ品のクーゲルンは空港はじめ,いたるところで購入できるが,本家のクーゲルンはザルツブルグの店でしか手に入らない.我々もザルツブルグに戻ってすぐに”フュルスト”に直行したことはいうまでもない). |
ザルツカンマーグート地方にそびる山です |
ここがトラップ大佐とマリ
アの結婚式のシーンで使
われた教会です |
内部には祭壇画などが飾
ってありますが,映画に
比べて狭く感じます |
モントゼー教会の周囲にはカフェや土産物屋が並びます |
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