夜更かしする理由もないこの島で,我々はたっぷりと睡眠をとり,またさわやかな朝を迎えた.メイン棟のレストランに向かい,朝食をとる.Kは卵料理としてオムレツをオーダーしたが,出てきたのは円盤状の「チヂミ」のような料理であった.(別にタレが添えられているわけではない)それでも結構旨かったようである.食後は相変わらず我々のテーブルにばかり例の鳩の仲間の鳥が群がっている.中にはジャムの上を歩いているものさえいる.
さて,バードアイランド滞在は今日までである.午後3時出発なのでまだ遊ぶ時間はある.今日は珊瑚礁のある側で泳ぐことにした.昨日出た方向とは逆に歩いていく.砂浜から岩場のようなところに出て行くと,蟹が歩いている.中には昨日目撃したシャコをくわえているものもいた.このときシャコは蟹の餌になっていることを知った.またしばらく歩いていくと,リーフに囲まれた,比較的波が穏やかなところに出る.我々はここで水着姿になることにした.そして石川啄木の詩による「初恋」(越谷達之助作曲)を口ずさみながら砂浜に腹這いになってみた.「砂山の 砂に腹這ひ 初恋の いたみを遠く おもひ出づる日」啄木といえば,せっかく砂浜に蟹も生息していることだし,「東海の 小島の磯の 白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる」も付け加えておこう.せっかく岩手県から来たことでもあるし.(ちなみにKの故郷である函館も,また啄木とゆかりの深い場所である)
砂浜でひととおりしみじみした後は,早速泳いでみよう・・・と思ったのだが,なんと困ったことに,水深が浅すぎるのであった.どうやら今は干潮の時間,いわゆるシュノーケルスポットと思しき場所はどこまで行っても浅いのである.ようやく水深がやや深い場所に行っても,座ってやっと肩がつかるぐらいである.まるで海で泳ぐというよりも,ビニールプールに浸かっているかのようだ.そこで我々は,やや深いところで泳いで,さもそれなりの水深があるかのように振る舞い,後からきた白人の宿泊客を騙す(?)ことにした.結局彼らは何事もなくその場を通り過ぎたようだが,騙されたかどうかはわからない.
泳いだ後はまた昨日通った滑走路を眺め,着替えてメイン棟へ行き,バーでビールを飲んだ.この日飲んだのは「EKU」である.ビールを飲んでくつろぎ,その後昼食である.この日もカレーが出た.昨日のより辛い気がするが,それでも旨い.我々だけでなく,ほかの白人の客の中にもおかわりをする者がいた.しかしやはり朝食の時と同じく,我々のテーブルにばかり鳩が群がるのであった.鳥がこんなスパイシーなものを舐めて大丈夫なのだろうか.
さて,出発は午後3時,この島にいるのもあとわずかである.部屋で荷物をまとめ,メイン棟のロビーに集合である.出発までの間,フロントに置いてあるゲストブックをのぞいてみることにした. |
バード島のさわやかな朝も今日で終わりです |
コテージのすぐそばの海岸にはベンチもあります.ここに座って夕陽を眺めるのもいいです |
東海の 小島の磯の 白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる |
砂山の 砂に腹這ひ 初恋の いたみを遠く おもひ出づる日 |
こちらの白い鳥はフェアリーターンという鳥です |
ピンボケになってしまいましたがフェアリーターンの卵です |
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過去に日本人も結構来ているようで,中にはかつて生後7ヶ月で連れられてきたことがあるという女性の記述もあった.ほかにはアフリカ本土(ケニアなど.恐らく親か夫が駐在しているのであろう)から休暇か何かで来た,という記述もあり,訪問者の多彩な人間模様を垣間見ることができて興味深かった.なお,我々と同じ時期に来ていたアジア系のカップルの一組は,タイ人であった.(タイ語の記述があったため). |
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そうしているうちにいよいよバードアイランドを離れる時間である.例の小型機に乗り込み,いよいよ離陸だ.従業員の子供らしき少年が「Bye bye,passengers!」と叫んでいた.間もなくプロペラ機は離陸し,またマヘ島へと向かって飛び立った.
思えばこの島は自家発電,ノートパソコンこそ持ち込んだもののテレビもない(LANケーブルなんてあるはずもない),ミニバーも部屋にはないし,決まった時間以外には食事の提供もない.音の出るマリンスポーツもできないし,まさに「便利さ」とはかけ離れた世界である.しかしこのような経験ができるところは,日本にはもはやそうそうないのではないだろうか.これもまた,ある種の「贅沢」なのかもしれない.このようなところで1週間暮らせば,もしかしたら痩せられるのではないかと思った.そのような意味で,「物質的に限られた条件の中で生きること」の大切さを,この島は教えてくれたと思う.そのような感慨にふけりながら,我々は島を後にしたのだった. |
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セイシェルでよく飲まれているビールのひとつEKUです(ちょっと辛口).もう1種セイブルーというのもあります |
メイン棟レストラン脇のカウンターでビールを飲む私です.顔が赤いのは日焼けのためかビールのためか不明 |
なぜか我々のテーブルにだけ鳥が集まってきます(ランチのカレーを食べている.大丈夫か?) |
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