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セイシェル旅行記(5)


2004年7月 3日(土)


バードアイランド最終日

 夜更かしする理由もないこの島で,我々はたっぷりと睡眠をとり,またさわやかな朝を迎えた.メイン棟のレストランに向かい,朝食をとる.Kは卵料理としてオムレツをオーダーしたが,出てきたのは円盤状の「チヂミ」のような料理であった.(別にタレが添えられているわけではない)それでも結構旨かったようである.食後は相変わらず我々のテーブルにばかり例の鳩の仲間の鳥が群がっている.中にはジャムの上を歩いているものさえいる.
 さて,バードアイランド滞在は今日までである.午後3時出発なのでまだ遊ぶ時間はある.今日は珊瑚礁のある側で泳ぐことにした.昨日出た方向とは逆に歩いていく.砂浜から岩場のようなところに出て行くと,蟹が歩いている.中には昨日目撃したシャコをくわえているものもいた.このときシャコは蟹の餌になっていることを知った.またしばらく歩いていくと,リーフに囲まれた,比較的波が穏やかなところに出る.我々はここで水着姿になることにした.そして石川啄木の詩による「初恋」(越谷達之助作曲)を口ずさみながら砂浜に腹這いになってみた.「砂山の 砂に腹這ひ 初恋の いたみを遠く おもひ出づる日」啄木といえば,せっかく砂浜に蟹も生息していることだし,「東海の 小島の磯の 白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる」も付け加えておこう.せっかく岩手県から来たことでもあるし.(ちなみにKの故郷である函館も,また啄木とゆかりの深い場所である)
 砂浜でひととおりしみじみした後は,早速泳いでみよう・・・と思ったのだが,なんと困ったことに,水深が浅すぎるのであった.どうやら今は干潮の時間,いわゆるシュノーケルスポットと思しき場所はどこまで行っても浅いのである.ようやく水深がやや深い場所に行っても,座ってやっと肩がつかるぐらいである.まるで海で泳ぐというよりも,ビニールプールに浸かっているかのようだ.そこで我々は,やや深いところで泳いで,さもそれなりの水深があるかのように振る舞い,後からきた白人の宿泊客を騙す(?)ことにした.結局彼らは何事もなくその場を通り過ぎたようだが,騙されたかどうかはわからない.
 泳いだ後はまた昨日通った滑走路を眺め,着替えてメイン棟へ行き,バーでビールを飲んだ.この日飲んだのは「EKU」である.ビールを飲んでくつろぎ,その後昼食である.この日もカレーが出た.昨日のより辛い気がするが,それでも旨い.我々だけでなく,ほかの白人の客の中にもおかわりをする者がいた.しかしやはり朝食の時と同じく,我々のテーブルにばかり鳩が群がるのであった.鳥がこんなスパイシーなものを舐めて大丈夫なのだろうか.
 さて,出発は午後3時,この島にいるのもあとわずかである.部屋で荷物をまとめ,メイン棟のロビーに集合である.出発までの間,フロントに置いてあるゲストブックをのぞいてみることにした.

バード島のさわやかな朝も今日で終わりです

コテージのすぐそばの海岸にはベンチもあります.ここに座って夕陽を眺めるのもいいです

東海の 小島の磯の 白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる

砂山の 砂に腹這ひ 初恋の いたみを遠く おもひ出づる日

こちらの白い鳥はフェアリーターンという鳥です

ピンボケになってしまいましたがフェアリーターンの卵です
 
 過去に日本人も結構来ているようで,中にはかつて生後7ヶ月で連れられてきたことがあるという女性の記述もあった.ほかにはアフリカ本土(ケニアなど.恐らく親か夫が駐在しているのであろう)から休暇か何かで来た,という記述もあり,訪問者の多彩な人間模様を垣間見ることができて興味深かった.なお,我々と同じ時期に来ていたアジア系のカップルの一組は,タイ人であった.(タイ語の記述があったため).   
 そうしているうちにいよいよバードアイランドを離れる時間である.例の小型機に乗り込み,いよいよ離陸だ.従業員の子供らしき少年が「Bye bye,passengers!」と叫んでいた.間もなくプロペラ機は離陸し,またマヘ島へと向かって飛び立った.
 思えばこの島は自家発電,ノートパソコンこそ持ち込んだもののテレビもない(LANケーブルなんてあるはずもない),ミニバーも部屋にはないし,決まった時間以外には食事の提供もない.音の出るマリンスポーツもできないし,まさに「便利さ」とはかけ離れた世界である.しかしこのような経験ができるところは,日本にはもはやそうそうないのではないだろうか.これもまた,ある種の「贅沢」なのかもしれない.このようなところで1週間暮らせば,もしかしたら痩せられるのではないかと思った.そのような意味で,「物質的に限られた条件の中で生きること」の大切さを,この島は教えてくれたと思う.そのような感慨にふけりながら,我々は島を後にしたのだった. 
 

セイシェルでよく飲まれているビールのひとつEKUです(ちょっと辛口).もう1種セイブルーというのもあります

メイン棟レストラン脇のカウンターでビールを飲む私です.顔が赤いのは日焼けのためかビールのためか不明

なぜか我々のテーブルにだけ鳥が集まってきます(ランチのカレーを食べている.大丈夫か?)
 


プララン島へ

 バードアイランドを発ったプロペラ機は,再びマヘ空港へと降り立った.今度はここでプララン島行きの便に乗り換える.マヘ空港の荷物置き場で預かってもらっていたスーツケースを受け取り,荷物を詰めなおして機内預かりにしてもらう.プララン島行きの飛行機はこれもまた小さいが,なにせ約15分のフライトである.飛行機に乗り込み,離陸して約15分,あっという間にプララン島である.

バード島からマヘ島へ.荷物を積み込んでいます
 
 プララン島に着き,空港の建物を出ると,ホテルの送迎の車が来ていた.車は島の道路を走ってゆくが,細い道にきつい傾斜,もしこんな道路が岩手県内にあったら間違いなく冬季閉鎖である.車はずっと海岸線に沿って走っていくのかと思っていたが(グロリアツーリストから送られてきたイラストマップでは,途中にガードレールなし,しかも急勾配・急カーブの道路がある旨が書かれていたが,その道路を通ることはなかった.海外でのバスや送迎の車など,旅行者自身の運転でない自動車事故のニュースが報じられることが時々あるが,もしその辺を通っていたら,我々も彼らの仲間入りをする羽目になったかもしれない),途中から山のなかの道路へと入っていった.ドライバー曰く「ここがヴァレ・ド・メ国立公園です」おお,ここだったのか.セイシェルを代表する植物「ココ・ド・メール」(双子椰子)が生い茂る,まるで恐竜時代を思わせる原始のたたずまいを見せるジャングル.ここがかの「ヴァレ・ド・メ国立公園」であった.
 やがて車はわれわれのプララン島での宿泊先,ホテル・ラルシペールへと到着した.ここはプララン島では「レムリア・リゾート」に次ぐ格式を誇る高級リゾートホテルである.植民地時代の邸宅か何かを思わせる,高級感漂うたたずまいである.玄関口で大変紳士的な従業員の歓迎を受けた.
 ロビーでウェルカムドリンクを振舞われ,その後に施設の説明である.このホテルは宿泊棟はコテージタイプになっており,それぞれの部屋へ行くには石の階段を登っていく必要がある.よって膝を痛めている人にはつらいかもしれない(丘の斜面にコテージが点在しているつくりなので,エレベーターはない)
 
 部屋は大変広く清潔で,ダブルベッドには天蓋があり,しかも花でデコレーションされている.優雅な気分になれることは間違いない(ただし,寝るときに片付ける必要があるが・・・)バスルームも清潔で広く,アメニティもおしゃれである.バスタブはないが,気にしない。(バスタブのないバスルームなど,過去にノルウェーなどで何度も経験しているので驚きもしない)

ベッドには毎日花びらが飾られる(寝る時片付けに大変 笑)
 
 シャワーを浴びた後,私はリコンファームをするためにフロントへ行った.ついでに,私はかねてから参加してみたいと思っていたツアーに参加できるか,交渉してみることにした.そのツアーとは,プララン島近海に浮かぶ島,自然保護区に指定されているクーザン島,双子椰子の原産地として知られるキュリューズ島,島の周辺海域でシュノーケリングが楽しめるサン・ピエール島の3島を訪ねる3島巡り観光である.実はこのツアーは火・木・金曜日の週3回しか催行しておらず,木曜と金曜は既にバードアイランドで過ごしてしまったため,参加できるチャンスは火曜日しかない.しかし火曜日は夜とはいえ帰国日である.このツアーに参加して,帰ってきてから18時35分のマヘ島行きの便に間に合うだろうか・・・.ギリギリのようであるが,可能な限りクーザン島に行きたい.そのような思いで私は一か八か交渉してみたのである.結果は・・・.大丈夫,OKらしい.MASON‘Sのスタッフによると,当日の段取りはこうである.
   
  1・まず荷物をまとめ,飛行機に搭乗する時のような身支度にして,
   一旦チェックアウトし,スーツケースをホテルに預け,ツアーに出発.
  2・ツアーからホテルに戻ったら,すぐ荷物を受け取ってすぐ車に乗り,
   プララン空港へ.
  3・マヘ空港についてから,空港内のシャワールームでシャワーを浴びて,
   きれいになってそのまま帰国.

   
 かなり慌しいが,私はたとえその可能性が低くても,ゼロでない限りは諦めずに挑戦したいのである.そのため,今回もこのような交渉を行い,実現へと踏み出したのである.
 


優雅なディナー

 交渉とリコンファームを済ませると夜である.こちらのホテルにもバードアイランドのときと同様に,現地の日本人の嘱託スタッフから電話が来た.この国で,私がK以外の日本人の声を聞いたのは,ほかにこの人だけである.本当に今,日本人旅行者は我々だけなのかもしれない.
 Kもシャワーを浴び,着替えて夕食へと向かう.ここでのドレスコードは案内書によると「elegant casual」要は襟付きシャツとスラックスを着用すればよいようだ.しかしバード・アイランド・ロッジと違い,皆かなり気合を入れているようである.

夕食に出かけるところです.ヨーロピアンなのでドレスコードはしっかりと
 
 コテージタイプの部屋を出て,石段を降りてレストランに向かう.ライトアップされたプールも見えて,優雅な気分になれる.やはりここはヨーロピアン・リゾートだ.
 ここでのディナーはコース料理である.フランス料理だ.やたら盛りが多いわけでもなく,味付けも上品である.店の雰囲気も大人の雰囲気が漂っている.大人といえば,実は我々はこのホテルで子連れを全く見なかった.ホテルの案内書には「あらかじめ申し出ておけば,子供向けのメニューを用意します」という記載も確かあったと思うのだが(このホテルが子供不可という話は聞かない),子連れの人は全く見かけなかった.もしかするとこのようなヨーロピアン・リゾートでは,旅行者層の「棲み分け」ができていて,子供連れはまた違うホテルに泊まるのかもしれない.ともかく我々は優雅なディナーとワインに舌鼓を打ち,部屋に戻って眠りについたのだった.
 



 

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