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セイシェル旅行記(4)


2004年7月 2日(金)


バードアイランドの散策

 前日の疲れと酔いとで,鳥の鳴き声も風や波の音も全く意に介さないまま,我々は深い眠りに落ち,朝を迎えた.普段我々が住んでいる北緯40度付近と違い,ここは赤道直下であるため,明るくなるのはこの時期はわりと遅い.それでも普段より早く目を覚まし,身支度をする.この日もさわやかに晴れ渡っていた.
 昨夜の夕食の会場と同じメイン棟に行く.ここでの朝食は好みの卵料理を注文できる.まず果物が出され,それから卵料理である.小型の鳩の仲間の鳥や雀のような小鳥がテーブルにも近づいてくる.どうも朝食の残りのパンくずを狙ってくるようだ.私は彼らの中でも,茶色系の体色の中に赤い色が混ざっている雀ぐらいのサイズの小鳥にのみパンくずを与えることにした.単にこの鳥の方が可愛らしく見えるからである.しかし,なんだか我々のテーブルにばかり鳥がわらわらと寄ってくるような気がするが,気のせいだろうか.外ではブラック・ノーディがまるで朝礼でもするかのように整然と地面に並んでいる.
 朝食後,我々はこのバードアイランドを一周してみることにした.この島は面積わずか6平方キロメートル,1時間もあれば一周できる.まず我々はロッジから歩いて外海に面している方,滑走路とは反対側にでてみることにした.目の前に広がるインド洋,しかしここは波が荒いので残念ながら遊泳禁止である.よってここでは浜辺を散策するのみである.宿泊客はほかにもいるはずだが,歩いているうちは2組ぐらいにしか会わなかった.波の音と鳥の声のほかはいたって静かである.

ロッジの中庭の木にも鳥が沢山止まっています


木に止まったブラック・ノーディ.何だかすごく偉そうです


鋭い目でパン切れなどを虎視眈々と狙っています
 


セグロアジサシのコロニー

 しばらく歩いていると,島の内部の方へと続いている道があった.今度はそちらのほうを歩いていくことにする.途中には「BIRDS OBSERVATION PLATFORM」と書かれた看板があった.しばらく歩いていくと,何やらコンクリートでできた高台のようなものがある.その高台のそばにも,既に沢山の鳥たちが群れをなして抱卵していた.我々のすぐそばで大きな卵を抱いている鳥も凄いが,我々が高台に上ると,もっと凄い光景が眼下で繰り広げられていたのである.
 そう,そこには大規模なセグロアジサシのコロニーが広がっていたのである.ここバードアイランドはカモメ科の鳥セグロアジサシの繁殖地として知られ,繁殖期の4月から10月にかけて,実に200万羽もの数が飛来してくるのである.「ぎゃあぎゃあぎゃあ」というけたたましい鳴き声に,あるものは抱卵を続け,あるものは雛に餌を与えている.多くは一羽につき卵は1個のようだが,稀に2個抱卵している個体もいた.しかしそれにしても,ものすごい数の鳥である.まさにヒッチコックの「鳥」そのままの世界ではないか.しかもこの鳥は,胸元は白い部分もあるが,翼の部分は黒い.このコロニーを生で見て,少なからぬ恐怖を抱く人もいるのではないか.鳥類図鑑や自然関係のTV番組ではよく見かける光景ではあるが,こうして実際に見てみると感動もひとしおである.

青空の下海岸沿いを歩いていきます

BIRDS OBSERVATION PLATFORMと書かれた方へ

こっちに行くと何やら鳥がいるらしいです.行ってみましょう
 

バードコロニーの案内板に従って脇の小道に入って行くと…

進んでいくと何やらけたたましい鳴き声が聞こえてきました

目の前で繰り広げられた光景に恐れおののく私
 

もう一面鳥,鳥,鳥だらけである

このように抱卵している鳥もいます

コロニー上を鳥が乱舞しています

曇ってくるとまさにヒッチコックの世界
 

無数のアジサシが乱舞するコロニーです
 


島を一周

 我々はコロニーを後にし,また浜辺を歩いていった.コロニーの端の部分でもセグロアジサシが抱卵している.砂浜の部分を歩いていると,何やら海老か何かが打ち上げられていた.何匹もいる.近づいてよく見ると,小さなシャコ,そう,寿司ネタでおなじみのあのシャコの小さい奴であった.それにしても何でこんなに打ち上げられているのだろう.後でわかったのだが,このシャコはこの辺の浜辺に生息する蟹の重要な食糧となっているようであった.しかしこれが,そのうち大きくなってあの寿司ネタに供されるシャコになるのかどうかはわからない.
 やがて我々は滑走路へと出た.滑走路といっても別に舗装されているわけではない.ただ離着陸しやすいように均されただけの地面である.滑走路へ至る道の脇には椰子の木が風にそよぎ,まさに熱帯雨林といった風情の植物が生い茂っていた.
 ロッジの敷地内に戻るが,昼食までにはまだ少し時間がある.我々はメイン棟のバーでビールを飲んだ.セイシェルのビールは「Sey Brew」と「EKU」の2銘柄が知られており,前者の方がどちらかというと軽い.そのほか中庭で写真を撮ったりしたが,このとき同時に宿泊していたイギリス人の婦人がシャッターを押してくれた.(そして我々はなんと,次の宿泊先のラルシペールでこの夫婦と再会するのであった)
 日本で生活する観点では,正午を回った頃に昼食・・・といきたくなるところだが(実際には仕事をしていればもっと遅くなったりするが),ここでの昼食は1時からである.ビュッフェスタイルで,噂のカレーもあった.このカレーがなかなか旨い.私もKも思わずおかわりをしてしまった.デザートも旨い.添えられているカスタードクリームは一見甘そうだが,実は甘みはほとんどなく,むしろデザート本体の甘みを和らげる効果があるのである.
 昼食後は敷地内にいる亀たちと写真を撮った.恐らく彼らは我々が生まれるはるか昔にこの地球上に生を享け,今まで悠々と暮らしてきたのだろう.日本でいえば幕末ぐらいから生きている個体もここにはいるのではないか.


バードアイランド・ロッジの看板

ゾウガメと戯れる私.カメはソッポを向いています

再び海岸にでます.真っ白い砂がとても眩しいです

島内の小道にはあちこちにこのような案内板があります

これがバード島の舗装もされていない短い滑走路です
 


ネイチャーウォーク

 メイン棟の黒板には,その日の天気や満干潮の時刻,食事のメニューなどが書かれるのだが,その日のイベント情報も書かれている.黒板の情報によると,その日は夕方から「ネイチャーウォーク」が行われるとのことだった.我々も参加することにした.
 指定の時刻にメイン棟前に集まり,ガイドの説明を受ける.ガイドはエルザさんという現地女性であった.これから島の各所を回りながら,島の動植物を説明つきで観察するのである.ちなみに解説は英語である.
 まずはこの島でもっとも多く見かける,ブラック・ノーディとフェアリー・ターン(シロアジサシ)である.前者は木の枝に見るからに「鳥の巣」という感じの巣を小枝や海藻などでつくり,そこで産卵・育雛するが,後者は巣を作らず,木の枝のくぼみに直接産卵するそうである.そして現に我々は,木の枝のくぼみに生みつけられたシロアジサシの卵を観察することができたのである.
 また,この島ではブラック・ノーディほど多数ではないが,彼らより大型の海鳥,シラオネッタイチョウを見ることもできる.我々はロッジからやや離れた木の根元にできたくぼみの中で,このシラオネッタイチョウの雛を見ることができた.その付近にはまた別の海鳥(だったと思うが,英語が聞き取れず詳細がわからなかった)の巣穴が地面に掘られているのが紹介された.(保護のために周囲にロープが張られていた)
 植物の紹介もあったが,その中でも最も強烈だったのが,名前は忘れてしまったがある植物の実であった.亀の頭部に何となく似ているその実は,かなり強烈なブルーチーズのような臭いがする.ガイドにすすめられて臭いをかいだKは,露骨にいやな顔をしていた.
 そして我々に紹介されたのが,この島の主,アルダブラゾウガメの「エスメラルダ」である.ゆうに200歳を超えているといわれているこの亀,やはり巨体である.ガイドの手から草や木の葉を食べたり,我々の目の前でいきなりおしっこをし始めたりして,笑いを誘っていた.
 その後,午前中にも行ったセグロアジサシのコロニーにも出かけたり,従業員宿舎付近で巨大カタツムリ(恐らくアフリカマイマイ)を紹介されたりして,ネイチャーウォークは一通り終わった.

名前は忘れましたがいかにも南洋系の花です

そして彼がこの島の最長老ゾウガメのエスメラルダさんです(推定200歳以上らしい)

シラオネッタイチョウの雛

着飾ったK

食後のコーヒー.バード島最後の夜です
 
 その後バンガローに戻ってシャワーと着替えを済ませ,夕食をとった.食後のデザートに続いて,雰囲気に呑まれたKはつい食後酒にコアントローを注文して飲んでいた.どうもディナーを食後酒で締めるという行為をしてみたかったらしい.酔いがまわった我々はバンガローへと戻り,また鳥の声も風や波の音も気にすることなく眠りについたのである.  



 

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