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SINCE 2011年9月25日
尾瀬旅行記(3)
2021年6月11日(金)
12.温泉小屋の朝
尾瀬2日目である.前夜は消灯後すぐに就寝したこともあってこの日は5時ごろに目が覚めた.さすが6月のこの時期は日の出が早いので周囲はすっかり明るくなっている.起床後はまず寝具を自身で畳んで整理するのが山小屋流だ(昔合宿で使った青年の家を思い出す).
6時になると「朝食の支度が出来ました」という館内放送が流れ、宿泊者は食堂へ移動.座席は来た順に係員に誘導される感じである.朝食はハムに切り身の鮭,漬物が中心で,温泉小屋らしく温泉卵もついていた(ご飯はお替り自由).
温泉小屋の朝食
実は前夜,この日の予定について考えた.昨日は疲労で三条の滝をパスしたわけだが,はたしてそれを今日に持ってくるか… いろいろ検討した結果,今回は断念することにした.理由はそもそもここから今夜の宿泊地である尾瀬沼東岸まで,まっすぐ行っても11kmと昨日歩いたのとほぼ同じ距離があること,そして最初の下り以外はほぼ平坦地だった昨日に対し,今日は途中白砂峠というけっこうな峠道があり,かなり披露することが予想されたからである.普通に歩いても昨日より大変なのに,さらに往復2時間の登山道を追加するのは我々の体力の限界を超えているだろうとの判断だった(滝は別の機会に必ずリベンジする).
13.見晴に戻る
そんなわけでこの日はゆっくりと思ってたのだが,朝食が早く,しかも天気もいいため山小屋にいてもすることがなく(笑),結局7時半にはチェックアウトし歩き始めることにした.三条の滝には行かないことにしたため,まずは昨日来た道を戻る.赤田代と呼ばれる湿原地帯から南へ向かい,まもなくすると東電分岐にさしかかる.ここを右折すれば東電小屋方面だが今日はこのまままっすぐ進む.東電分岐から15分ほどで見晴に到着した.
昨日も小休止に利用した弥四郎小屋前のベンチでしばしの寛ぎタイム,この先しばらくトイレがないので,公衆トイレで出すものをしっかりと出して支度を整える.そして8時30分ごろいよいよ尾瀬沼方面に向かって移動開始,見晴の集落から東に延びる木道を進んでいく.見晴地区は尾瀬ヶ原の東の端に位置するためここから先はしばらく森林地帯を歩くことになる.そして尾瀬ヶ原と尾瀬沼の間には約200mの標高差があり,尾瀬沼に向かってほぼ片勾配の峠道となっている(ちょうど碓氷峠みたいな感じ).
温泉小屋をバックに、さあ出発
赤田代から見晴へ
昨日も来た弥四郎小屋
至仏山方面を望む
見晴集落内
14.白砂峠
見晴の集落が終わると早速道は登りになる.基本的に木道が敷かれてはいるが,損壊が著しい個所も多かった(尾瀬ヶ原とは違ってこちらは歩く人が少ないので,木道の補修もなかなか進まないのだろう).
その後は普通の登山道と(傷んだ)木道が交互に現れる形でひたすら登っていく.途中,倒木があって迂回を余儀なくされる個所もあり苦労する.とはいえ尾瀬は気温がそこまで高くなく湿度も低いのと,このルートは基本的に森林地帯で直射日光にさらされないことから,全身汗でびしょびしょとまではいかなかった(昨年9月の父島ハートロックの時ほどはきつくなかったと思う).
見晴を出発して2時間いよいよ岩がごろごろする急こう配に差し掛かる.ここが最後の難所だろうと喘ぎながら登っていくと,ついに
白砂峠
と書かれたプレートを発見,2時間登りっぱなしは堪えたが,それなりに達成感に浸った我々だった.
峠を過ぎてもすぐ下りというわけではなく,しばらくは平坦な木道が続く.さすが標高が高い(1680メートル)せいかまだ残雪があり,それが解けてできた水たまりが目に入る.そしてその水たまり周囲には水芭蕉が生えていた.尾瀬ヶ原はもう見ごろの終盤だが,標高が高く日差しの少ないこの辺はまだまだこれからのようである.
傷んだ森の中の木道
普通の登山道
倒木のため迂回
岩場の登り
へばってます
白砂峠のプレート
峠での記念写真
まだ残雪がある
水芭蕉
15.白砂田代
そんな水たまり地帯が終わると岩場の急な下りになる.こうした場所は足首のケガを起こしやすいのでポールを使いながら慎重に下っていく.かなりの急こう配だが距離は短く,あっという間に開けた土地に出た.昨日歩いた尾瀬ヶ原を思わせる風景だが,ここは白砂田代と呼ばれる森の中にぽっかりと開けた湿原,ちょうどテラスがあったのでしばし小休止することにした.
白砂田代(沼尻方面)
ここまで歩いてきた白砂峠越えルート,反対方向からくる人がチラホラいたものの,基本的には人の数は少なく今世間で言われている密とは無縁な世界である.聞こえてくるのは流れる水の音とカエルの鳴き声だけ.声のする方を色々探してみたが残念ながらカエルの姿は見つけられなかった.
白砂田代(見晴方面)
ここにも池塘がある
水芭蕉の群生
15.沼尻
小休止の後再び歩き始める.白砂田代が終わると再び森の中に入っていく.多少のアップダウンはあるがさほど苦労することなく歩いて行けた.やがて20分ほどで周囲が開け,目の前に大きな湖が現れた.尾瀬沼だ! ついにたどり着いたと感慨深い気持ちになる.
沼のほとりには沼尻休憩所の建物があり,売店等はないものの普段なら休憩に利用できる場所だが,2021年は休業ということでトイレ含め使えない状態になっていた.
とはいえ我々は予定通りここで大休止,昼食の時間とした.この日はお湯を沸かしてカップヌードルを作る.こういう環境で食べると美味いんだよなと感慨に浸りながら食べた.昼食後は沼の方に近づいてみる.なにやら船着き場のようなところがあったので恐る恐る行ってみた(かつてはボートでも出ていたんだろうか).
またしばらく森林地帯
尾瀬沼
カップヌードルを作る
他にも休んでいる人が
船着場(?)
16.尾瀬沼北岸を歩く
大休止後再び荷物を担いで歩き始める.尾瀬沼は1周の遊歩道が整備されており,ちょうど北西端に位置する沼尻からは沼の北岸・東岸を進む時計回りルートと,西岸・南岸を進む反時計回りルートがある.ただ後者は悪路が多いため,一般に推奨されるのは北岸ルートとなっている.今回は初めての尾瀬ということで我々も北岸ルートを選択した(もっとも南岸ルートの方が沼に近いところを通るため風光は良いというウワサ).
とはいえ北岸も沼がよく見える場所はあるし,その他水芭蕉の群生地も結構あってそれなりに景色を堪能しながらの散策ができた.歩き始めから40分程度進んだ森の中で左に分岐する小道を発見,こちらは長英新道という燧ケ岳山頂へのルートで,もちろん上級者向けだ.今回の我々には関係のないルートなので曲がることはなく,そのまま直進した.
再び森の中
尾瀬沼が美しい
水芭蕉の群生
たくさん咲いています
美しい!
16.尾瀬沼東岸
分岐から間もなく周囲は急に開けて湿原が広がる地域に出た.ここは大江湿原と呼ばれ,かつては尾瀬沼の一部だったところが湿原化ところと言われている.福島県側の尾瀬の入口である沼山峠から1時間程度下ってきて到達する湿原地帯のここは南端になる.我々が尾瀬沼北岸ルートを東進していくと,やがてその沼山峠方面と尾瀬沼東岸方面とに分岐する三叉路へに突き当たった.ここを右折して尾瀬沼東岸へ向かうと再び森林地帯に入っていく.ここになにやらゲートのようなものが設置された場所に出た.なんだろうと思ったらこれも鹿対策の柵だった.
そんな鹿対策ゾーンを抜けると,まもなく複数の建物が姿を現した.このうちの一つ,一番奥まった場所に立つのがこの日の我々の宿泊先尾瀬沼ヒュッテである.桧枝岐村営の山小屋だ.時間的にはまだ2時ちょっと前だったが早々にチェックインして休むことにした.
鹿対策の看板
鹿よけのゲート
尾瀬沼ヒュッテ
17.尾瀬沼ヒュッテ
通された部屋は昨日の温泉小屋と同じ8畳間だったが,こちらは個室利用を前提に建てられているためか鍵がついていた(その他支払いにクレジットカードが使えるなどちょっと町っぽさもある).その後はさっさと入浴,ここは温泉ではないものの,尾瀬の湧水を沸かしたお風呂はとても気持ちがいい(基本的に尾瀬の山小屋のお風呂はシャンプー・せっけん不可であるが,今年はコロナ禍ということで備え付けのもののみ使用可になっていた).
尾瀬沼ヒュッテの夕食
入浴後はビールを飲んだりして過ごし,5時から夕食,ここは部屋ごとの座席指定だった.食事は副菜が豊富でおいしかった.この時間帯になると昨日以来の運動による筋肉痛が出てくる.「痛い痛い」と言いながら立ち上がる私だった.消灯はここも9時,もちろんさっさと就寝である.
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