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 白獅子仮面

カッチンカチャリコ ズンパラリン
カッチンカチャリコ ズンパラリン
光が消えたら真っ暗闇だ〜
闇にはびこる悪いやつ〜
二丁十手がカチッと鳴れば〜
スカッと参上〜 白獅子仮面〜  

        
 
(オープニングテーマ 歌 水木一郎)  


1.体制側のヒーロー白獅子仮面

 白獅子仮面は昭和48年に放送された,時代ヒーローモノである.同じ系列の作品としては,変身忍者嵐怪傑ライオン丸などがある.ただ嵐やライオン丸の場合,主人公は忍者やさすらいの浪人であり,彼らは社会の裏側にあって,決して表には出てこない存在である.時代設定もはっきりしていない.これに対し,白獅子仮面は時代設定もはっきりしており,しかも社会的にも認知された存在という点が異色である.

なぜか一人だけパンツスタイルの剣兵馬です.左は大岡越前の妹の縫(えらく年の離れた妹だ).
 
 白獅子仮面の時代背景は,江戸時代しかも18世紀前半の享保年間とはっきりしている.なぜなら,白獅子仮面に変身する”剣 兵馬(つるぎひょうま)”は忍者や浪人などではなく,江戸南町奉行大岡越前の懐刀といわれる与力だからである.れっきとした幕臣(将軍にお目見えの許されない御家人ではあるが),今で言えば国家公務員だ.当然事件も江戸の町を中心にして起こるため,時代劇のセットが必要であり,なんと!京都で撮影されている.結構本格的な作品なのである.      
 
 
 



2.なぜ幕府が出てこないのか?

 と,ここまで書いていて思うのだが,相手は大魔王の日本侵略である.そんな国の一大事に立ち向かうのが,単なる町奉行とその配下のみというのは,いくらなんでもスケールが小さいんじゃないか,暴れん坊将軍みたいに吉宗自身が出てきて戦えとはいわないが,せめて老中や若年寄といった幕閣が出てこないのはなぜなんだと思ってしまう.
 しかし,劇中ちゃんとその辺のいきさつが述べられるのである.江戸時代,江戸の治安を守るのは町奉行だけではない.当時の江戸には町人が住む領域の他に,武家屋敷や寺社なども存在し(面積的には武家や寺社の方がよっぽど大きい),ここには町奉行の権力は及ばない.武家は目付大目付が,寺社には寺社奉行がそれぞれ治安の任に当たっていたのである.いうなれば,身分別の治安機構ということになる.すなわち江戸全体の治安を守ろうとするならば,町奉行と寺社奉行,目付,大目付が力を合わせる必要があるのである.大岡越前も当然そのことは感じているらしく,江戸城に赴いた折にその旨を進言したらしい.しかし,「今のところ事件は町方でのみ起こっているため,寺社奉行も大目付もぜんぜん取り合ってくれない」とぼやくのである.すなわち,寺社や武家屋敷では事件が起こってないから協力しないと言われたらしいのである.江戸時代の行政は現代以上にセクショナリズムが強そうだから,案外ありそうな話である.もしかしたら火焔大魔王もその辺を考えて,わざと町方でのみ事件を起こしているのかもしれない.愚痴をこぼす大岡越前に兵馬は「江戸の平和は町方だけで守っていかなくちゃならないんですね」とつぶやくのだった.そんなわけで,白獅子仮面の世界では妖怪軍団に立ち向かうのは,大岡越前とその配下の与力や同心のみという厳しい状況が続くのであった.
   
   
   
   
   



3.白獅子仮面のパターン

 白獅子仮面が他のヒーローモノと異なる要素として,敵キャラが複数登場するという点も挙げられる.一般にヒーロー番組では敵の怪獣・怪人は1話につき1体が常識だが,複数の敵キャラが出てくるのだから結構贅沢である(複数といっても,たくさんの種類の妖怪が出てくるわけではなく,唐傘小僧なら唐傘小僧が4〜5体出てくる感じ).ただこの番組には仮面ライダーなどでおなじみの雑魚キャラ(戦闘員)が出てこないから,複数の妖怪は戦闘員の役割も果たしていると考えられる.

白獅子仮面(右)と大岡越前(左)
 
 物語はまず妖怪が出現して町で事件を起こす.事件の内容は,江戸中の井戸を襲って水不足を起こしたり,江戸中の米や油を奪って品薄にしたりといったパターンが多い(わずか5〜6体の妖怪のみで人口100万の江戸の物資を押さえるのだから,物凄い行動力だ).それに対して大岡越前とその配下が出動し捜査にあたる.その過程で妖怪と兵馬の戦いとなり,一旦は妖怪を撃退する.後半は大魔王に怒られた妖怪たちが作戦を練り直し(毎回妖怪たちが大魔王に怒られるシーンが出てくる トホホ),再度攻撃をしかけてくる(この際人質をとられたりするパターンが多い).ここで再び戦いとなり,今度は兵馬が白獅子仮面に変身して敵を全滅させるというのが一般的なパターンである.実は剣兵馬は生身でも結構強い.武器は二丁十手と少し頼りないが,これで妖怪の一体や二体なら倒してしまうほどだ.むろん白獅子仮面になれば,よりパワーアップしているが,別に光線などの必殺技があるわけでもないため,無理をして白獅子仮面に変身しなくてもいいんじゃないかと思ってしまうのだった.白獅子仮面の存在意義が問われるのである.      
 
 
 



4.白獅子仮面の存在意義

 しかし,よく考えると実は白獅子仮面に変身する必然性がちゃんとあるのだった.それはである.兵馬が白獅子仮面に変身すると,まず馬を呼んでそれに乗って走っていく.たかが馬ぐらいと思うなかれ,結構これ重要な要素である.考えてみれば兵馬は単なる与力(御家人)であり,身分にうるさい江戸時代に,白昼江戸の町で堂々と馬を走らせるわけにはいかなかったのである.旗本なんかとすれ違った日には,「無礼者!」となって,場合によっては大岡越前の監督責任が問われることになりかねない.

白馬にまたがり,江戸の町を疾走する白獅子仮面.
 
剣兵馬のままでは馬にも乗れない時代なのである(実際に兵馬のままで馬に乗るシーンは,郊外で輸送隊の護衛にあたる場面くらいである).妖怪と戦うにあたってこれはきつい.敵は空を飛ぶヤツもいるのだ.いくら兵馬が強くても,走って追いかけるには限界があるだろう.その点白獅子仮面なら,馬を走らせていても異形の存在として,身分にうるさい幕府上層部も黙認してくれるのであろう.兵馬が白獅子仮面に変身するのは馬に乗るためといっても過言ではないかもしれない.
 かくして白獅子仮面は「馬にまたがり,今日も行く〜(主題歌より)」のであった. 
 

追伸1: このように深い考えのもと企画され(?),しかも京都で作られた本格的時代劇だったにもかかわらず,白獅子仮面は視聴率的には振るわず,わずか13回で打ち切りになってしまいました(今見るとよくできた作品と思うのですが,子供向けとしては中途半端だったかもしれません.派手な武器も出てこないし.いっそのこと大人向けの時代劇にしたほうがよかったりして).

追伸2: 主題歌の3番に「やるぞ世直し,剣の舞い〜」という歌詞が出てくるが,これはおかしい.白獅子仮面は体制側の存在であり,現有の秩序を守るのが仕事である.世直しとは基本的に反体制側の者が言うセリフだ.


  参考文献: 全怪獣怪人大百科53年度版  ケイブンシャ  1978年

 
 
 



 

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