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 アイアンキング

地獄の底から蘇る
悪魔の化身,毒の花
戦えぼくらのアイアンキング〜
守れ緑のこの大地
ショック!ショック!アイアンショック
霧の〜中から〜アイアンキング

        
 
(オープニングテーマ 歌 子門真人)  


1.異色のヒーローアイアンキング


 アイアンキングは昭和47年秋から翌48年春までの半年間放送されていた特撮怪獣番組である.赤いボディーに銀色のマスクという造型は,円谷プロのウルトラセブンやファイヤーマンを髣髴させる.言ってしまえばウルトラセブンのゾロ(後発品)といった感じだ.したがって,これがウルトラセブンと同様に,主人公が正義のチームに属していて,ピンチになるとアイアンキングに変身,なんてストーリーだったら,おそらくは歴史に残ることのない番組であったろう.
 しかし,実際にはこのアイアンキング,随所にオリジナリティーにあふれた設定が散りばめられており,私の琴線を大いにくすぐる番組に仕上がっていたのである.
 アイアンキングの基本設定はこうだ.現在の日本の政権を打倒しようとする勢力があった.彼らは不知火一族という日本の原住民なのである.この作品の日本史観は弥生文化を持った大陸の騎馬民族が,縄文文化を持つ日本の先住民を征服したという学説(騎馬民族

これがアイアンキングだ

霧島五郎が「アイアンショック!」の掛け声で変身
 
征服説 元東大教授の故江上波夫博士による学説)に沿っている.不知火一族は日本の現体制(「大和政権」と彼らは言う)を倒すため,巨大ロボットを操って破壊活動を開始した.これに対し,国家警備機構(警察の特殊部隊みたいなものか?)は不知火一族の陰謀を阻止すべく,一人のエージェントを派遣する.このエージェントこそ”静 玄太郎”(しずか げんたろう)であり,彼を補佐してアイアンキングに変身するのが霧島五郎なのであった.    
 
 



2.驚くべきその設定

 さて,このアイアンキングの特異な設定を見てみよう.

その1 アイアンキングは番組の主人公ではない!
 
 いきなりこれである.番組のタイトルロールが主人公ではないのだ.実は「アイアンキング」の主人公は静玄太郎であり,アイアンキングおよび霧島五郎は脇役に過ぎないのである.タイトルロールが主人公でない作品としては,「天才バカボン」(主人公はバカボンのパパ),「ドクタースランプ」(主人公はアラレちゃん)などがあるが,ヒーローモノとしてはきわめて異例である.言ってみれば仮面ライダーの主人公が滝和也(仮面ライダーを助けるFBIの捜査官)であるようなものだ.


アイアンキングの主人公である静玄太郎
 
 
 
 
その2 アイアンキングのエネルギー源は水である.
 
これもすごい設定だ.大抵のヒーローは超磁力や反重力,光子力エネルギーといった未来的なものをエネルギーにしているのに,アイアンキングは水をエネルギーにしているのだ.紀元前7世紀のギリシャの自然哲学者のタレスが「万物の根元は水である」といっていたが,水をエネルギーにしているヒーローなんて他にはいないだろう(水をどういう原理でエネルギーにしているのかは不明,もしかして重水素からの核融合?).アイアンキングの変身が解けた霧島五郎がいつも,「水〜,水〜」といって水をがぶ飲みするシーンが描かれていたのが印象的である.

その3 活動時間がわずか1分である.
 前述のエネルギーが水というのに関係するかどうかわからないが,アイアンキングの活動時間はわずか1分である.ウルトラマンの3分,ウルトラマンレオの2分40秒と比較してもこれは短い.短すぎる.これではまともに戦闘をすることすらできない(エネルギーが少なくなると胸や額の星が点滅するのはウルトラマンのカラータイマーと一緒).

その4 敵ロボットを倒すのはアイアンキングではない!
 活動時間1分と関係すると思われるが,アイアンキングは基本的に敵を倒せない.実際に敵を倒すのは主人公の静玄太郎であり,アイアンキングはそのサポートに回るのである.巨大な敵を倒すのが生身の人間で,巨大ヒーローのアイアンキングがサポート役とは,他では絶対考えられない設定である(ウルトラセブンなどに例外的にそういうエピソードがあることはあるが 注).主人公の静玄太郎は腰のアイアンベルト(すごい名前)を振り回して敵をシバき倒すのである(アイアンキングが放送されていたのは私が小学校1年生のころで,当時静玄太郎に憧れて,教室で自分のベルトを振り回して先生に怒られたものだった).実際に敵組織も二言目には口癖のように「静玄太郎を倒せ!」とはいうが,「アイアンキングを倒せ!」とはあまり言わないのである(笑).

注: ウルトラセブン第14話,第15話の「ウルトラ警備隊西へ(前後編)」でペダン星人のスーパーロボット(キングジョー)を倒すため,セブンがキングジョーを押さえつけた状態で,ウルトラ警備隊が新兵器ライトンR30爆弾でやっつけるというエピソードがあった.    
 



3.妙に政治的な敵

 さらにアイアンキングでは,出てくる敵もまた一風変わっている.これは全作品の脚本を書いた佐々木守氏の作風なのかもしれないが(佐々木氏はウルトラマンのジャミラやガバドンのように,純粋な勧善懲悪でない脚本で知れている),当初の不知火一族は日本の原住民であるし,その後に登場した独立幻野党(別名まぼろし兵団)も政府転覆をたくらむ極左テロ集団といった印象だった(お互い同士と呼び合っていた).
 特に不知火一族は2000年もの間,迫害されてきた人々であり,彼らの破壊活動は今の日本人にとっては不都合なことであるのは確かだが,絶対的な悪かといわれると答えに窮するのである(この辺はウルトラセブン第42話「ノンマルトの使者」に通じるものがある).主人公の静玄太郎にしても,純粋な正義の味方というよりも,仕事に徹するプロの戦士という感じである.彼は任務遂行のために平気で他人を犠牲にするところがあり,ある意味でゴルゴ13的な人物なのである.
 このようにアイアンキングは一見ウルトラマンシリーズのゾロのように見えて,異色の作品に仕上がっているのでした(当時はそんなことを全く考えずに見てましたが…).

不知火一族

独立幻野党

静玄太郎たちの旅は続く
 
参考文献:  全怪獣怪人大百科 ケイブンシャ 1977年
         切通理作 怪獣使いと少年 宝島社文庫 2000年  
 
 



 

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