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 ファイヤーマン

ある日〜 突然〜 眠りを〜 覚まし〜
地球をおそう〜 神秘〜の影に
だれかが むかって 行かねば ならぬ
不思議の〜 謎を〜 解かねばならぬ
地球が地球が大ピンチ!
地球を地球を守るのだ!
ファイヤー ファイヤー
ファイヤースティック手にもって
変われ! 変われ! 燃えるマグマのファイヤーマン

        
 
(オープニングテーマ 歌 子門真人)  


1.怪獣番組の原点

 ファイヤーマンは円谷プロの10周年記念作品として,ウルトラマンタロウ,ジャンボーグAとともに昭和48年(1972年)に制作された怪獣番組である.ジャンボーグAの項でもふれたが,昭和48年というのは第2次怪獣ブームの爛熟期で,雨後の筍のように数多くの番組が乱立していた時期である.それゆえ,どの番組も他との差別化を図るべく苦労していたのだが,このファイヤーマンでは,当時この手の番組で定番だった宇宙ではなく,地球の奥深く,すなわち地底にスポットを当てているのが特色である.すなわち地殻変動によって地底に眠っていた太古の恐竜が目を覚まし怪獣化して活動を開始,地球に危機が訪れるというのが基本コンセプトである.このあたりは帰ってきたウルトラマンの初期と類似しているが,現実にこの時期は小松左京の日本沈没などの大異変モノがブームであり,そういう時代背景に沿った作品ともいえる.

オープニングタイトル

ファイヤーマン
 
 番組の主人公,岬大介は地底に住むアバン大陸の住民から地上に派遣された戦士である.普段は地球防衛チームのSAFに所属しているが,怪獣の襲撃で危機に瀕した時ファイヤースティックを振りかざすことでファイヤーマンに変身,地球を守るために怪獣と戦うのであった.
 という具合に,基本コンセプトは極めてオーソドックスであり,円谷プロが「特撮怪獣番組の原点に還る」と言っていたのもうなずける.ちなみに岬大介役を演じたのは後のゴレンジャーで赤レンジャーを担当する誠直也さん,勇気ある人格者というイメージの役者さんなので,そのあたりも怪獣番組の王道といえるかもしれない.
 



2.頭脳と行動を併せ持つ組織SAF

 怪獣番組といえば,人間の正義のチームの存在が定番であり,ファイヤーマンではそうしたチームとしてSAF(SCIENTIFIC ATTACK FORCE)が登場する.一般に正義のチームというと,前線に出て怪獣と戦う実戦部隊的(=肉体派)のイメージがある.しかしこのSAFは,その名にScientific という名がついていることから想像できるように科学を前面に押し出した組織というのが特色である.隊員は全部で5人なのだが,そのうち海野隊長,水島副隊長,千葉隊員の3人は博士号を持っていることが明らかになっている(海野は海洋学と生物学,水島と千葉は工学で博士号を持っている).残りの二人(ファイヤーマンに変身する岬隊員と紅一点の葉山隊員)の学位については番組内では語られていないが,どちらも研究に関わっていたことから,その知的水準は高いといえよう(岬は考古学研究室所属,葉山は海野の助手だった).

SAFの面々,左の3人は博士の学位を持っている

潜水艦シーマリンに乗り込むメンバー
 
 従来のヒーロー番組の博士というと,白衣を着た年配者で,およそ戦闘とは無縁な存在だったのだが,このファイヤーマンでは博士が前面に立って怪獣と戦っているのが印象的であった(戦う博士という感じか 笑).一方でSAFの制服であるが未来的なデザインに加えて,隊員毎に独自のカラーが使われているという,後の戦隊シリーズなどに引き継がれそうな制服になっていた.
 ちなみに博士役といえば,第9話に岬の師匠という設定で平田明彦さん扮する田所博士が登場したのだが,これがレインボーマンのミスターKを髣髴させるキャラで笑えた.
 



3.やっぱり地味だったのか?

 そんな怪獣番組の原点を指向したファイヤーマンであったが,宇宙ではなく地底がモチーフ,しかも出てくる怪獣も恐竜の変異だからなのか,地味な色彩が多く残念ながら当時の子供のウケは今一つであった.視聴率も常時一桁台に低迷してしまう.
 そこで第13話からテコ入れが図られ,放送時間が変更になるとともに作風にも変化がみられるようになった.地殻変動の多発という設定はあいまいにされる一方で,宇宙怪獣や宇宙人の登場など宇宙からの侵略に対抗するファイヤーマンという側面が強調されるようになったのである.何のことはない,一般のヒーロー番組への路線変更というわけである.
 その一方で物語の舞台も大都市ではなく山村がメインの回が多くなった.特に村の子供が事件に巻き込まれる → SAFとファイヤーマンがそれを助けるというパターンが主流になり,子供の味方ファイヤーマンという路線が強調されるようになった.もっとも山村を舞台に

必殺技,ファイヤーフラッシュを放つ

最終回に登場した物体X
 
したのは特撮にかかる費用を軽減できるからでは?などと勘ぐってしまうのだった(都市が舞台だと破壊するミニチュアが多いし).
 そんなテコ入れをしたにもかかわらずファイヤーマンの視聴率は向上せず,結局全30話で打ち切りになってしまった.ちなみに最終回「宇宙に消えたファイヤーマン」は,地球のの兵器では破壊できないという恐るべき物体X(造形的には肉団子みたいであまり強そうではないが)を持ったファイヤーマンが宇宙に飛び立ち,閃光とともに消えるというショッキングな展開であったが,一方で当初の地底人云々という設定は光の彼方に消え去ってしまったのであった.
 



 

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