ビザンチン皇帝の部屋 本文へジャンプ
アクセスカウンター
 SINCE 2011年9月25日
       

第35回しばれフェスティバル参加記録〜準備編〜


1.北海道陸別町

 昔の交通安全の標語に「狭い日本そんなに急いでどこへ行く」というのがあった.日本の陸地面積は約38万平方キロで世界第62位,地球の陸地面積のわずか0.25%を占めるに過ぎないので,そんな標語ができてもおかしくはない.しかしながら日本は多数の島々から構成される海洋国家であり,その分布は北は北方領土から南は沖縄や小笠原まで意外に広い.さらには日本の経済的な主権がおよぶ排他的経済水域(いわゆる200海里)の面積を調べると,約447万平方キロとなって,これはなんと!世界第7位の規模となる(カナダやロシアと同程度).日本は決して狭くはないのである.
 そんな狭くない日本は気候も様々で,沖縄が亜熱帯気候で年中温かい一方で,北東北や北海道は亜寒帯気候であり冬の寒さは厳しい.特に北海道内陸部の寒さは強烈である(北海道の最北端は稚内であるが,海があるため案外寒くはない).そんな北海道内陸部のなかでも特に寒いことで知られているのが,道東の北見と帯広の中間あたりに位置する足寄郡陸別町である.ここは真冬にはマイナス20℃を下回るのは日常茶飯事で,さらにはマイナス30℃になることもあるという極寒地帯だ.こんなに寒いと住民の心も暗くなってしまうんじゃないかと心配になるがさにあらず,陸別町では逆に寒いことを町おこしに利用している.それが毎年2月初めに開催されるしばれフェスティバルで,2015年までに34回を数える伝統あるお祭りだ.花火大会や芸能ショーなど各種イベントが行われるのだが,そのメインイベントともいえるのが人間耐寒テスト,陸別の寒い夜を一晩屋外で過ごすというすさまじい企画(究極の我慢大会)である.
 


2.人間耐寒テストに参加決定

 この人間耐寒テスト,昔から変わったもの,珍しいもの好きな私の琴線を十分に刺激してくれるイベントでありぜひ参加したいと常々思っていた.しかし寒い地域出身で実は寒がりな自分は真冬になるとついつい南国に逃げることが多く(笑),なかなか参加に踏み切ることができなかった(近年でも2012年2月パラオ,2013年2月カンボジア,2014年2月ミャンマーと暑い地域に旅行に行っている).
 だが2016年の2月は特に旅行の予定もなく,今度こそ参加しようという気分になってきた.ただこの人間耐寒テスト,近年はメディアなどでも取り上げられることが多くなり,全国から私のような人間(物好きともいう 笑)がたくさんやってくるようだ.

第35回しばれフェスティバルのポスター
 
一方で会場の都合などもあり,現実に参加が可能なのは300人程度が限界らしい.このため近年は事前の申し込みが多数で抽選というパターンになっており,参加したい≠参加できるというのが実情である.とはいえ,申し込まないことにはどうにもならないのと,仮に抽選に漏れたらそれはそれでお祭りの気分だけでも味わうことができればということで申し込みをしたのである(12月中旬の1週間程度が申込期間).ちなみにウチのKもこのイベントに興味があるらしく一緒に申し込みをした.
 そして申し込み締め切りから数日して実行委員会から2名で参加可能というメールでの連絡がやって来た.かくして我々のしばれフェスティバル人間耐寒テストへの参加が決まったのである. 
 


3.事前準備

 さて,参加が決定すると今度は事前準備である.なにせこのイベント,マイナス20℃を下回る極寒の夜を過ごすという企画だ.何も考えずに参加したら凍死の恐れがある.お祭りのサイトでも冬山登山のイメージでの準備が必要となっていた.2008年から神奈川県に住み,冬にあまり寒いところに繰り出していない我々はそんな極寒仕様の装備は持っていない.これらの大半は新調しなくてはならないということで,今回はダウンの上下やフリース,スノーシューズなどの衣類に加えて冬山用のシュラフやウレタンマット,さらには小型のバーベキューコンロなども用意した(これらのアイテムはイベント後は防災用品として活用できる).

しばれフェスティバルの案内
 
 そうこうしているうちに1月も下旬になり,陸別町から封書が届いた.中身はもちろんしばれフェスティバルの注意事項である.フェスティバル全体に関する案内に加えて,今回参加する人間耐寒テストについての案内&注意事項が記されていた.それによると,

@ 受け付けは15時から17時の間であること

A 当日は参加者用の駐車場があること

B 防寒対策は万全にしてほしいこと

といったことが書かれていた.特にBに関してはしつこい程に強調されていて,

「酔っぱらったまま、屋外で眠ってしまうと本当に凍死してしまいます(冗談抜きです)」
となっていた(まあ,マイナス20℃でそのまま寝たら死ぬわな).

 

しばれフェスティバルの注意事項
 

 というわけで,改めて防寒対策を徹底すべく各種アイテムの点検を実施,当日の服装はトップスとして肌着がウール,化繊等3枚,その上にシャツ,セーター2枚,フリースジャケット,インナーダウン,ヤッケ,とどめにボロのカシミアコートという合計10枚重ね,ボトムスがヒートテックの下着からタイツ2枚,冬用スラックス,ダウンパンツ,ヤッケの6枚重ね,それにレッグウォーマーやネックウォーマーなどのアイテムも装着とかなりの重装備となったのだった.

これら全部をを重ね着する
 


4.出発の日

 そしていよいよしばれフェスティバル前日(2016年2月5日)となった.お祭り自体は2月6日夕方から(さらにいえば耐寒テスト参加者(チャレンジャー)の受付はその日の15時から17 時)ということで,当時朝に北海道入りしても十分間に合う日程である.しかし長く厳しい夜を乗り切るためには事前の休息は欠かせないだろうということで,前日のうちに北海道入りして英気を養うことにした.2月5日は午後2時過ぎに仕事を切り上げてそのまま羽田に向かう.空港到着後は事前に発送しておいたスーツケースを受け取る.スーツケースは海外旅行に持っていくサイズのもの,なんでそんなに物々しいのかという声が聞こえてきそうだが,前述の各種装備品を入れるにはこれくらいのスーツケースでないとどうにもならないのだった(特にウレタンマットが嵩張って,それだけでスーツケースの4分の1を占める).チェックインカウンターに行こうとしたら,山口県岩国市の特設ブースが開設されていた.どうやら今回羽田−岩国の便が増発されるということでの観光PRらしく,岩国名物(?)のシロヘビも来ていた.これから日本最寒の地に行こうという矢先に温かい岩国の話題,ちょっと不思議な気分になった.その後チェックインを済ませてスーツケースは預けてセキュリティの中へ,この日の利用は帯広空港便である.陸別に行く際には女満別空港からの方がアクセスは短いのだが, 今回はANAの旅作を利用したところ,旅行代金が女満別空港便よりも帯広空港便の方がずっと安かったというのがその理由である.
 17時ちょうどに飛行機は羽田を離陸出発,途中ちょっと揺れながらも順調に飛んで予定よりも5分ほど早く帯広空港に到着した.

やけに物々しい荷物

岩国のシロヘビです
 


5.帯広の夜

 飛行機からボーディングブリッジに出た瞬間ヒンヤリとした空気がやってきた.関東とは明らかに違う空気である.ただ予想以上の寒さという感じではない(マイナス3℃だった模様).ターミナルに入って預け荷物を受け取って外に出る.陸別にはレンタカーで向かうのだが配車は明日なので,この日の帯広市内への移動はバスである.空港から市内へのバスは帯広駅直行便と市内の主要ホテルを回る便の2系統があるが,今回自分たちが宿泊するホテルにもバスが停まるということで後者を選択した.
 空港を出ると一面の銀世界,広大な十勝平野とところどころに木々が一列に並んで立っているいかにもな光景が広がっていた.畑部分には雪が積もっているものの路面は乾燥しており,バスの走行は順調でほぼ予定通りに市内に入っていった.ホテル前でバスを降り,

夜の帯広市内

ふる屋のカウンター
 
そのままチェックインした後部屋に入って荷物を置く.一息ついたらさっそく夕食に繰り出すことにした.この日はホテル近くにあった十勝ダイニング ふる屋さんに入った.ちょっとおしゃれな感じの居酒屋である.寒い夜は熱燗に限るというわけで,一杯目からさっそく熱燗,料理は魚,肉,野菜とバリエーションが豊富だった.特に十勝ビーフの箱舟蒸しが美味だった.  

冬は熱燗です

ホッケ

十勝ビーフの箱舟蒸し
 


6.いざ陸別へ!

 そして翌2月6日の朝がやって来た.しばれフェスティバル初日である.この日はゆっくり活動開始,ホテルで朝食摂ってチェックアウトギリギリの10時にホテルを出た.そのまま駅前のニッポンレンタカーで車を借りて出発となる(今回は雪でも大丈夫なように4WD車を調達した).とはいえいきなり陸別ではなく,まずは郊外のホームセンターへ.目的はバーベキュー用の炭や着火剤,チャッカマンの調達だ.これらは航空機に持ち込み&預けができないため現地で調達するしか方法がなかったからである.炭は余ってもしょうがない(家に持ち帰る手段がない)ので3キロ入りを1箱購入した.その次はスーパーに行って肉や鍋セット(土鍋を準備しているわけではないのでアルミ製の出来合い品),焼酎やワインなどの食料品を購入する.これらは準備してきた保冷バッグに入れておく.
 買い物が終わるといよいよ陸別に向かうことに.往路は帯広から北上して音更町,士幌町を経て上士幌町から東進,足寄町から再度北上する241号&242号線ルートである.途中士幌町で昼食,これから始まる長くて厳しい夜を耐え抜くために,地元のしほろ牛のステーキを食べて気合を入れた.この日の十勝地方は朝から快晴,周辺にはたくさんの雪があるものの道路は乾燥していて非常に走り易かった.途中川が凍結しているところもあったりと,本州以南とは全く違う北海道の冬景色が広がっているのが感慨深い.
 途中に渋滞なんかあるはずもなく順調に陸別に到着,まずは道の駅の駐車場でこれからのための装備一式を着こむ(自分の場合,化繊,ウール,ヒートテックの下着からセー ター,フリースジャケット,インナーダウン,ヤッケ,一番外側にボロのカシミヤコートまで計10枚の重ね着 笑 ボトムスも5枚重ね着プラス レッグウォーマー).事前に実行委員会の方からも徹底的な防寒対策をと言われていたからである(一方で良さげなものをその都度買い足したため,メーカーはモンベル,ナンガ,ミズノからユニクロまで脈絡がないものとなったが).その後いよいよ会場に移動である.
 

しほろ牛のステーキ

十勝平野とまっすぐな道

凍てつく川
 


第35回しばれフェスティバル当日編に続く   


 

トップページに戻る