今年のコンテスト参加者は45名と去年の1.5倍であった.ちなみに私は10番,コシゾウさんは16番だ.コンテスト1次審査は各自が制限時間内に何か好きなことをPRする.自己紹介でも,居合の型を見せるでも,はたまた一人芝居でも何でもいい.ただし舞台上で血を吐くのは禁止された(昨年血を吐く演技をした人が複数いたため).昨年は一人2分くらいの持ち時間だったが,今年は人数が多いためか一人1分の制限だった.番号の若い順に6人ずつステージに上がって,順番にパフォーマンスをするとのことで,我々は6人ずつ並ばされた(10番の私は2組目となる).1組目には件の三樹三郎の他,昨年永倉新八役だった女の子もいた.彼女は昨年長刀を使った一人芝居を演じていたが,今年も同様のコンセプトらしかった.ただ制限時間が1分と聞かされて,「1分じゃどうしてもまとまらないんですけど,絶対に1分じゃなきゃダメでしょうか」とすごく不安そうにしている.私は「3分超えるようならマズイでしょうが,2分以内なら大丈夫じゃないですか」などと根拠もないことを言って慰めるばかりだった(実際に1分で非情に打ち切られた人はいなかったが).
さて私のいる2組目には,バリッと和装を決めたいかにも剣術の上手そうな男性(その着物には近藤勇の紋がついていた.こ,これは只者ではない!)がいたが,その他に私の隣には見覚えのある人が….向こうもこちらを見ている.「もしかして去年の…」,そう去年六番隊でお世話になったエルプロの方であった.「今年はコンテスト参加ですか」と聞くと,「ハイ」という返事.もちろん狙いは六番隊組長井上源三郎だ.実は今回からパフォーマンスコンテスト(パレードの途中で団体としてパフォーマンスを行い,表彰するという企画)が行われることになっており,彼女は六番隊を構成するエルプロの結束を固めるべく,隊長もまたエルプロが勤めるという,六番隊総エルプロ化計画のために送り込まれたエージェントのようであった(根拠なし,私の妄想かもしれません 笑).またまた強力なライバルの出現におののく私だった.
私の後ろ3組目にはコシゾウさんのほか,先ほどの女の子がいた.さらに後方を見ると去年の局長や神楽教授はずっと後ろの方だった.その他ひときわ目を引いたのが,背の高い白人男性であった.今年のコンテストにはフランス人も応募していると聞いていたが,どうやら彼がそうらしい.これら有力なライバル達を迎えて,さあいよいよ1次審査の開始である.
1組目から6人ずつステージに上がってパフォーマンスが始まった.新選組への思いを語る人,ステージで叫ぶ人,居合いの型を披露する人など様々である.ただ言えることは,やっぱりみんな熱い.2組目あっというまに私の順番がやって来た.名前を呼ばれると私はマイクに向かって走った.「奥州南部脱藩!○×△□,私が所属している医局には厳しい法度があります.それは……」,用意した模造紙を広げる私.そこには”医局中法度”の文字が,
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医局中法度書
一、医道ニ背キ間敷事
(医の心を忘れるなということ)
一、医局ヲ脱スルヲ不許
(つらくても勝手に病院をやめるなという意味)
一、勝手ニ副業致不可
(お金が欲しいからと,勝手に他所の病院でアルバイトをするなということ)
一、勝手ニ診断書取扱不可
(自分ひとりの判断で診断書を書くなということ)
右条々相背候者切腹申付ベク候也 |
模造紙2枚に書き連ねた医
局中法度書です. |
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「去年も法度にそむいた若い研修医が切腹しました(ウソ).尚切腹に当たってはこのアルコール綿で消毒して,外科用メスで腹を切ります!」と叫んだ.会場は「オーッ」というざわめき,とりあえずウケてはいるようだ.ここまでで1分ちょっと,余りオーバーすると心象が悪くなりそうなのでスパッとやめて退散した.かくして私のパフォーマンスはあっさりと終了した.
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1次審査にてこの直後医局中法度が飛び出します(提供 風雅さん). |
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定位置に戻った私はフーッと息をつき,後続の人たちのパフォーマンスを見る.私の次はエルプロエージェントのイノウエさん(芸名),さすがに源さんに懸ける熱い思いを語っていた.その次の近藤勇の紋をつけた和装の男性は,その外見どおりに鮮やかな演武を披露していた(愛媛県出身らしい).かくして2組目のパフォーマンスは終了し,我々はステージを降りた.その後もコンテストは順調に進み,コシゾウさんはこの日のために髪の毛まで抜いた苦労と土方歳三へのメッセージを熱く語っていた.また例のフランス人の男性は,日本語で「私の国フランスは幕府を応援していましたが,残念ながら薩長に敗れ…」と幕末期のフランスと幕府の密接な関係をアピールしていた(これはポイント高いかも).かくして1次審査は滞りなく終了した.
1次審査が終了すると我々は最初の集合場所に集められ,そこで実行委員会の方から「審査発表があるので3時半に再びここに集合してください.そして2次審査のセリフを,えーっと,誰が合格してもいいように覚えておいて下さい」と言われた.集合はともかく,合格できるかどうかもわからないのに暗記するのもなーと不真面目な私は思っていたが,昨年の永倉の女の子は合格を確信しているのか,暗記せざるをえないメンタリティーなのか一心不乱にセリフと格闘していた.審査の間特設ステージでは地元の子供達による演技が行われ,しばしほのぼのとした雰囲気が漂っていた.そしていよいよ1次審査の発表である.
司会の女の人が「さあ,今私の手元に審査結果が来ております」と気分を煽り立てる.「ではランダムに発表いたします.11番,12番,16番…」,とりあえずコシゾウさんは合格だ,でもよりによって自分の次の番号から合格なんて,しかもランダムと言いつつ順番どおりじゃないかと泣きたい気持ちになってきた.合格は番号順に発表されながら,突然「4番,6番」と再び若い番号に戻った.オーッと思っていると,「10番○×△□さん」と私を呼ぶ声,あー合格だと涙を浮かべながら壇上に上った私でした.
結局合格者はコシゾウさん,私の他,昨年の永倉の女の子,昨年の局長,エルプロのエージェント,近藤勇紋の男性,神道無念流の男性などであった.そして例のフランス人男性もめでたく合格した. |
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