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三重県北西部に位置する伊賀地方は周辺を山に囲まれた盆地となっている.古来京都や奈良に近いという地理的特性からこの地は僧侶などの修行地として知られ,奈良時代には役小角もここで修業したと伝えられている.観光的には風光明媚な景色が広がっており,特にその南部にある名張市と奈良県の県境領域は室生赤目青山国定公園に指定されている.渓谷をメインとした美しい自然が売りとなっており,現在では名古屋方面や大阪方面から多くの観光客が集まっている.
そんな室生赤目青山国定公園の中心ともいえるのが,今回のテーマ赤目四十八滝である.大阪のメイン河川である淀川水系宇陀川の支流,滝川が作り出す渓谷にかかる滝である.一つの滝を指す言葉ではなく,渓谷上にたくさんの滝が見られるのが特徴である(山梨県の西沢渓谷や長野県の田立の滝と同じ系統).四十八というのは言葉通りに四十八あるわけではなく,「たくさんの」という意味だ.また赤目というのは,その昔この地で修行していた役行者が赤い目をした牛に乗った不動明王に出会ったという言い伝えによるものである.
名張市街地から国道165号線を南西に走り,県道543号に左折し南下,そのまま県道567号を進んでいく.途中1車線の狭い道路になる地帯を進みながら(しかもバスも通る!)15分ほどでお土産物屋が立ち並ぶエリアに到着である.駐車場はお土産物屋併設の有料駐車場がメインとなる(1回800円程度).こうした土産物店街の端にある日本サンショウウオセンターが滝への遊歩道の出発点だ.ここから往復8キロのハイキングコースとなる.沿道には数多くの滝があるが,特に規模の大きい5つを赤目五瀑という. |
赤目四十八滝入り口 |
行者滝 |
霊蛇滝 |
赤目牛の像 |
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不動滝(赤目五瀑) |
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出発してしばらくは高低差や段差もない快適な遊歩道で,5分ほど進むと赤目五瀑のひとつ不動滝に到着する(高さ15m,幅4m).昔はここから先は道がないため,観瀑はここまでだったという.そばには滝名の由来となった赤目牛の像があり,ご利益にあずかろうとする観光客が置いて行ったと思しき小銭が散らばっていた(ほとんど1円か5円).
不動滝から先は階段や急な上り下りもあるなど街歩きスタイルでは厳しい行程となる.そうした遊歩道を進むこと15分ほどで赤目五瀑の2つ目となる千手滝に到着する(高さ15m,幅7m).ごつごつした岩肌に当たった水流が複雑に変化していくさまが,あたかも千手観音の手のように見えることから名付けられたのだろう.そこから数分で五瀑3つ目の布曳滝である(高さ30m).こちらは一転して上品な細い直瀑だ.
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乙女滝 |
八畳岩 |
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千手滝(赤目五瀑) |
布曳滝(赤目五瀑) |
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そこから先は再び階段や勾配が連続する道を進む.途中には陰陽滝,姉妹滝などの小規模の滝の他,竜ヶ壺・横渕などの大きな滝壺を見ることができる.
布曳滝から25分,行程の約半分のところに大きく開けた場所がある.ここが百畳岩と呼ばれるところで,その名の通り百畳ほどもある広さの一枚岩の岩盤である.ここは休憩スポットともなっており,散策者が思い思いにお弁当を広げたりしていた.
その後も笄滝,雨降滝などの細かい滝を眺めながら進んでいくと,スタートから1時間15分ほどで赤目五瀑4つ目の荷担滝に至る.この滝は落差8mで,中央にある大きな岩により滝が2つに分かれて落ちていく様が,あたかも荷物を担っているように見える(リュックサックなどの肩ベルトのイメージか)ことからその名がある.赤目四十八滝の中でも代表的な存在で,ガイドブック等でもこの滝の写真を載せていることが多い.
荷担滝からさらに10分ほど上流に登ると赤目五瀑最後となる琵琶滝に到着,高さは15mで滝の形が楽器の琵琶に似ていることからその名がある.その後さらに上流に向かうこと10分ほどで巌窟滝が見え,ここが遊歩道の終点である(巌窟滝の名は滝の中腹に岩穴があることからという).この巌窟滝周辺も休憩スポットとなっており,東屋なども設置されている.私が散策した際もここでお弁当をいただいた.
帰路は往路と同じ道を戻ることになる.
(訪問日 2020年11月1日) |
遊歩道 |
竜ヶ壺 |
陰陽滝 |
百畳岩 |
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雨降滝
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骸骨滝(滝そばの岩が頭蓋骨に似ている) |
斜滝
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荷担滝(赤目五瀑) |
琵琶滝(赤目五瀑) |
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