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 新選組 in 長州


1.城下町萩

 山口県萩市は幕末維新期にいわゆる雄藩の一つである長州藩の城があった城下町である.藩主の毛利家は戦国時代には安芸の国人領主に過ぎなかったが,毛利元就の代に大内氏や尼子氏といった周辺の大大名を併呑して,豊臣政権期には中国地方に120万石を領有する一大勢力になった.しかし1600年の関が原の戦いで当主の毛利輝元が西軍の総大将に祭り上げられたことから,戦後周防・長門2カ国36万石に大減封されてしまう.この時に毛利氏の新しい本拠地となったのが山陰の萩であった(それ以前の毛利氏の居城は広島).

指月城とも呼ばれる萩のお城です
 
 以来200年以上の間に長州藩の城下町として栄えた萩だったが,明治維新後いわゆる功をなした長州出身の政治家がみな東京にいってしまったことと,すでに幕末の段階から藩の政庁が,より京都に近い山口に移っていたことから,明治以後も萩が大きく発展することはなかった(明治後新政府の顕職に就けなかった前原一誠ら長州士族たちが起こした反乱が萩の乱である).現在でも萩は主要交通路から外れており,街も近代的とはいえない.しかし,だからこそ古い城下町の雰囲気を色濃く残すレトロな街並みが残る,どこか懐かしい街になっているのである. 
 そんな萩はまた,着物が似合う街でもある.実際に着流しで萩の街を歩いた方のサイトもあった.私もこんな街を着物で歩きたい.そんな時私の心に語りかける声が,「
どうせなら新選組装束で歩こうよ」,えっ!そりゃまずいんじゃないか.幕末期において長州藩はほぼ一貫して反幕的である.途中から寝返った薩摩や藩主は佐幕派だった土佐とはワケが違う.長州と新選組は敵同士じゃないのか.それでも声は囁く,「だからこそ面白いんじゃないか,皇帝ならやってみろよ」.これが”新選組 IN 長州”の企画が誕生した瞬間であった(思えばこれが私をフォースの暗黒面に引き込んだ声だったのか 笑). 
 
 


2.坂本龍馬は新選組だった

 さて”新選組 IN 長州”決行が決まると,次は作戦である.ひの新選組まつりや地元岩手では別に新選組装束で街を歩いてもなんら問題ないが,萩となれば話は別.何かカモフラージュが必要だ.そんな時ひらめいたのが,2006年暮に発売された一冊の本.タイトルは「坂本龍馬は新撰組だった!」(ぶんか社文庫)というぶっ飛んだものである.元治元年禁門の変,馬関戦争と相次ぐ敗戦で危機に陥った長州藩が息を吹き返すきっかけになったのが,坂本龍馬の斡旋で結ばれた薩長同盟(慶応2年1月)である.いわば龍馬は長州の恩人ともいえるわけで,龍馬スタイルで萩を歩く分には違和感はないであろう.

2006年に発売された,一風変わった幕末本
 
 つまり龍馬紋の長衣に袴で街を歩き,いざとなったらダンダラを羽織って鉢金をしめて新選組に早変わり,人が近づいてきたら羽織を脱いで龍馬に戻るという寸法だ.これなら念願の”新選組 IN 長州”もスムーズにできるに違いない.かくして”坂本龍馬は新撰組だった!”作戦が完成した.
 2008年2月の3連休に作戦決行と決まり,2月8日夕方に気合で仕事を切り上げて新幹線に飛び乗り一路東京へ.本当は東京から急行銀河に乗って,翌朝新大阪から一番の新幹線に乗り換え長州入りするつもりだったのだが,2008年3月で廃止が決まった銀河の人気は凄まじく,思い立った時にはチケットが完売してしまっていた.このためやむなく品川で一泊し,朝一の”のぞみ”で西に向かった.
 萩に行くには山口からバスに乗り換えるのが手っ取り早いのだが,せっかく山口県に行くのだからまだ行っていない本州最西端の毘沙ノ鼻や難読駅で知られる特牛駅も是非行ってみたいということで,下関まで行くことにした.2月9日11時に下関に到着,駅でレンタカーを借りて一路海岸沿いを萩に向かった.
 


3.作戦決行!

 途中毘沙ノ鼻や特牛駅に寄り道しながら,午後3時頃に萩に到着した.ホテルにチェックイン後市内に繰り出す.目的は下見である.明日は朝から松下村塾をはじめ,高杉晋作の家,桂小五郎の家,堀内鍵曲などのスポットを素早くめぐり,写真を撮らなくてはならない.もたもたして観光客に見つかったら大変だ.「あっ,新撰組だ」と通報されてしまう恐れがある(笑).当日素早く行動するためにも下見をして街のつくりを頭に叩き込んでおく必要があるのだ.一通り見て回った後はホテルに戻り,風呂に入って地元の珍味に舌鼓を打ったのだった.
 そして明くる2月10日(日)早朝からいよいよ”新選組 IN 長州”の開始である.龍馬スタイルに着替えてホテルをチェックアウト,浅葱色のダンダラは風呂敷に仕舞い,大小は今回購入した刀袋に入れておく.最初に向かうは町の東にある松蔭神社と松下村塾である.まずは罰が当たらないように神社に参拝,その後いよいよ作戦決行だ.まずは龍馬のふりをして松下村塾に行く.すでにチラホラと観光客の姿も見え,みんな興味深げに私を見ている.「
いやー,坂本龍馬が松下村塾に遊びに来たんですよ」などと言いながら人々をやり過ごし,人気が無くなったところで新選組に変身,急いで写真を撮った.その後は城下町に移動,狭い路地を走り回って高杉晋作の家や桂小五郎の家,雰囲気抜群の堀内・平安古の両鍵曲などを巡っていく.

松下村塾にて.「みんなおるかのう」

松下村塾の中には,ここで学んだ者達が,みな新選組のライバルです

萩は夏みかんが良く似合う街です
 
 街中では地元の観光協会の人と間違われたり,他の観光客に道を尋ねられたりした(「高杉晋作の家はどこですか」と聞かれたのだが,前日の下見の甲斐あって,「ああ,2本先の路地を曲がってすぐですよ」などと偉そうに答えたのだった.少なくとも私が新選組と気付いた人はいなさそうだった 笑).ただ,途中新選組の格好をしている時に団体客がやって来たため,慌てて草むらに隠れるという危険な一幕もあった.
 街中での撮影が終了した後は,萩城址に程近い菊ヶ浜を訪ね疾走シーンを撮影,その後は萩郊外にある萩往還(萩から山口に抜ける古道,現在の国道262号線にほぼ一致する)の一升谷の石畳を訪問し,私の”新選組 IN 長州”は終了した.
 

「おーい,高杉さん,遊びに来たぜよ」

ここは田中義一の別邸の一室です

「わっ,新選組じゃ!こりゃまずいきに」
 


4.新選組 IN 長州


副長土方歳三の命を受け,一人の隊士が長州に潜入した(一升谷の石畳).

彼は情報収集に余念がなかった(笑).

 

松下村塾に張り込む新選組(袖章は武田観柳斎).

怪しい人影に思わず竹薮に潜む新選組だった.
 

鍵曲から武家屋敷の様子を伺う新選組.

桂小五郎の家を襲撃する新選組.

 

続いて高杉晋作の家を襲撃(冬季はお休みだそうです 笑).

ちょっとした隙を見て脱出した高杉晋作を追いかける新選組
 

一休みとばかりに,軒先の夏みかんを頂戴する新選組(笑).

菊ヶ浜を疾走する新選組.彼の旅はまだまだ続くのだった(オイ).
 

堀内鍵曲で不逞浪士を追跡する新選組隊士
 

菊ヶ浜を駆ける新選組.彼の進む先には何が待ち受け
ているのか
 



 

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