セブンイレブンというコンビニエンスストアには,特定地域に集中的に店舗を展開するという経営戦略があるらしい.このためローソンやサンクスが全国に満遍なくあるのに対し,セブンイレブンはきまった都道府県にしかない.私の住んでいる東北地方ではセブンイレブンがあるのは宮城・山形・福島の3県のみである.またこれらの県でも,店舗密度には地域によってかなりばらつきがある.これは輸送コストを低く抑えることに目的があるように思われるが,その結果いわば店舗の空白地帯が生じることになる.この空白地帯をたくみに突いたと思われるのが,ここで紹介するセブンメルシーである. セブンメルシーとは昭和60年代から宮城県の県北に3店舗(当時電話帳で調べた限りでは)展開している(いた?)コンビニエンスストアである.当時このあたりはセブンイレブンの空白地帯であった.名前から想像がつくように120%セブンイレブンのパクリである.ただここのすごい所は名前が似ているばかりでなく,店の看板までそっくりにしていたことである.名前だけ似ている店なら,たとえば”すかいらーく”をパクった”すかいぱーく”など他にもある.セブンイレブンの看板といえばでっかい7の字の下に小さくELEVENと書いてあるあれであるが,一方セブンメルシーの看板はでっかい7の字の下に小さくMERCYの文字.実際には色の使い方が微妙に違うため,並べてみれば明らかに別物とわかるのだが,普通の人は看板の色まで覚えていないので遠くから見ればまさにそのものである.私も何人かの友人に看板の写真を見せたが,全員がセブンイレブンの看板と信じて疑わなかった. このセブンメルシーの存在を教えてくれたのは,例によってNである.当時Nは家庭教師のためこの辺に通っており,その際に見つけたらしい.私も面白いので東北大学時代,弘前大学時代に何度か買い物にいった.その後就職してしばらく行かなかったが,平成12年久しぶりに行って見たところ目の前にセブンイレブンが開店しており,メルシーは廃墟と化していた.たしかに空白地帯であればこそ存在しえただろうが,本家本元が進出してくればあの看板で訴訟が起こらないはずはなく,撤退せざるをえなかったのだろう.ただ,あの看板だけは健在であり,かくして本物とニセ物の看板が並立する愉快な光景が見られるのであった.
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これが在りし日のセブンメルシーだ!拡大して見てみよう. |
現在のセブンメルシー(左側)と向かいに新しくできたセブンイレブン |
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注) その後セブンイレブンは全国展開を強め,平成25年現在岩手や青森にも店舗が出現している. |