ヨーロッパや東アジアでは各国を支配するのが王で,その諸国の王を束ねるのが皇帝というイメージです.一方の大公や公は大貴族と言った方がイメージがつかみやすいかもしれません.ただ,必ずしも 皇帝−国王−大公 といった支配被支配の関係があるわけではなく,(たとえ形式的には主従関係があったとしても)実際にはお互い独立した君主というケースが多いようです.
民主主義と相いれないイメージのある君主制ですが,それでも世界にはいまだに君主制を採用している国があり,日本もその一つです.もっともこれは最近になって積極的に始めたという例はほぼなく,昔からの伝統として存続している国がメインです.
人間には伝統のあるもの,古いものに敬意を表す性質があり,この伝統というものが現代に君主が残っている根拠でありましょう.日本の皇室も長い伝統がありますし,イギリスの現王室も成立したのは18世紀ですが,元々はドイツ(当時の神聖ローマ帝国)の選帝侯(神聖
ローマ帝国皇帝を選挙する資格を持った大貴族)のひとつという由緒ある家系です.またスペインの王家はフランス革命で有名なブルボン朝であり,その始まりはルイ14世の孫にあたります.
一方アジアに目を向けると,タイ王国の現王朝も18世紀以来の伝統があり,現国王ラーマ9世は九代目にあたります(ラーマというと日本人はマーガリンを連想しますが,こちらはインドの叙述史ラーマーヤナから来ているものと思われます).
現代世界において,主として新興国では大統領制をとっている国がほとんどです.選出方法は選挙だったりクーデターだったり様々ですが,大統領職は一代限りのものであり,個人の運と実力,カリスマがあれば誰でもなれる可能性があります.しかしこれが王や皇帝となれば,一般にこれらの地位は世襲ですから,世間を納得させるのは大変です.
近代において一軍人から皇帝になった人物としてナポレオン・ボナパルトがいますが,彼ほどのカリスマと実績をもっ てしても,皇位を永続させることはできませんでした(1804年皇帝になったナポレオンも戦争に敗れて1814年に廃位されています.後に彼の甥がナポレ
オン3世として皇帝になりますが,普仏戦争に敗れて退位させられています).
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