江戸時代に五街道の一つとして整備された甲州街道,江戸と幕府直轄地だった甲府(一時親藩による甲府藩時代もあり)とを結ぶ重要路線である.江戸の内藤新宿を1番目として甲府までに38の宿場があるが,全行程の半ば過ぎ23番目に位置するのが猿橋宿,その名の通り猿橋にほど近い宿場である.
猿橋は相模川の上流桂川に架かる橋であるが,当地は川の両岸が深さ30メートルの崖になっているものの,幅も30メートルほどと狭いため橋脚を設置しない様式の橋を造るには有利な地形だった.こういう地形の場合良く採用されるのは吊橋であるが,この猿橋では刎ね木を用いた刎橋の形式を採用しているのが特徴である.
刎橋とは岸の岩盤に穴をあけ,そこに刎ね木と呼ばれる材木を差し込み,それを支えとして架橋する工法である.強度を保つため刎ね木は1本ではなく複数設置されるのが一般的であり,この猿橋では4層の刎ね木が使われている他、木の腐食を防ぐために刎ね木に屋根が付けられている.
猿橋の歴史は古く,伝承によると飛鳥時代に当地に滞在していたイラン系の渡来人が大勢の猿が繋がって川を渡ってた様子からここの架橋を思いついたとされている.記録の上で登場するのは室町時代から,今のような形状が記録されているのは18世紀以降だという.
(訪問日 2022年5月31日) |
甲斐の猿橋 |
こうしてみると普通の橋です |
屋根付きの刎ね木が出ています |
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