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第2次世界大戦初期のドイツ軍によるポーランド,フランスへの電撃戦において戦車部隊の主力として活躍したのがこのU号戦車である.さぞすごい戦車だろうと思って見てみると実に地味な戦車である.まずは車体が小さい.ほとんど軽戦車である(最大装甲14.5mm,速度40km/h).戦車砲も20ミリに過ぎず,とても相手戦車の装甲は破れない.どうしてこんな戦車が主力だったかというと,当時(1939年)後に主力となるV号,W号戦車は量産中で実戦配備に間に合わなかったからである.第1次世界大戦に敗れたドイツはベルサイユ体制の下戦車の保有を禁じられていたため,農耕用トラクターの名目で極秘裏に戦車開発を進めていった.こうして誕生したのがT号戦車であり,これに改良を加えたのがU号戦車であった. ドイツ軍がこのような戦車で勝利を得ることができたのはひとえに運用が優れていたからに他ならない.一般に戦車は歩兵支援用として各歩兵部隊に分散配備されていたこの時代に,空軍の援護の元,集中運用された戦車群をもって敵陣を突破,後方へ回り込んで撹乱し,分断された敵を後続の歩兵部隊が各個撃破するという画期的な作戦(電撃作戦)を採用した結果である.たとえ個々の戦車の性能が劣っていても運用しだいで勝利を得ることができることを証明したわけである(これは後の独ソ戦初期のバルバロッサ作戦や太平洋戦争のマレー戦も同様である.もちろん運用のレベルが同等であれば個々の戦車の優劣が勝敗を左右することは言うまでもない).
U号戦車は独ソ戦開始後,主力の座をV号,W号に譲ったがその後も指揮戦車として,あるいは各種自走砲の土台として第二次世界大戦の全期間を通じて活躍した.
写真 塗装がアフリカ戦線用なのには深い意味はありません.この時通常の塗料がなかったものと思われます. |
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